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漫画で将棋に興味を持ってほしい

――好きな将棋を仕事にしたいという野望はあったのですか。

さくら そんな野望はあまりなくて「将棋楽しいからみんな見て!」と漫画をブログに描いていたら、そこからお仕事につながったという感じなんです。お仕事いただけるのは、将棋の漫画を描いている人が少ないのもあったかもしれません。

 将棋の世界では「普及」という言葉がよく使われます。将棋を広めることを意味するのですが、プロの棋士、女流棋士はもちろん熱心に普及活動をしていますけれど、アマチュアにもそんな方がたくさんいます。自分の利益には全くならないのに、将棋の練習会を開いて楽しく将棋を指せる場を設けてくれたり。私はそんなことはできないけれど、漫画で将棋を知ってもらう普及ができればいいなと思っています。なるべく将棋への敷居を低く感じてもらえるように、興味を持ってもらえるように心がけてきました。

 古参のファンが幅を利かせて、新入りが入りにくい雰囲気は将棋界には比較的少ない。優しい人が多いです。それは古参の人に「将棋ファンが増えるのはいいこと」と思っている方が多いからと私は思っています。

――イベントにもしょっちゅう参加されているようですけれど、それは漫画の取材の一環なのでしょうか。

さくら いえ、楽しそうなものは自腹で申し込んでいます。将棋会館は大阪と東京の2か所にあり、老朽化で東西ともに建て直しをして、間もなく完成。その費用はクラウドファンディングで集められていて、人気棋士と直接お話しできるイベントなど、魅力的なリターンがたくさんありました。コラボ企画で藤井聡太七冠のお名前入り駒を持ったピカチュウのぬいぐるみとか、話題を集めたものも。将棋ファンの皆さんの協力でなんと9億円も集まったんです。私も、高いリターンではありませんが、新・将棋会館見学ツアーに申し込みました。

 大盤解説会を見たくて名古屋まで行ったこともあります。万松寺という繁華街にあるお寺が会場でした。タイトル戦は両対局者に供されるおやつも注目され報道されるのですが、同じものが解説会でファンに販売されていたのも良かったです。

 将棋漫画でお金をいただく分と、教室に通ったり楽しそうなイベントにあれこれ参加したりしてお金を出す分と比較すると、赤字なときもあるかも(笑)。

(インタビューに立ち会っていた『えりりんの女流棋士の日々』担当編集者が一言。「新将棋会館でしたら、自腹を切らなくてもこちらで取材をしていただこうと思っていましたよ」)

さくら ええー。早く言ってくださいよ。楽しそうなリターンなのですぐに申し込んでしまいました。

2024.09.21(土)
文=宮田聖子
撮影=松本輝一