褒めると人の本質が見えてくる

 一方で、こんな気づきもありました。それが、褒めるポイントを見つけようと相手を観察していると、たくさんのいいところと同時に、その人の弱点も見えてくるということ。

 「どうしてそんなに承認欲求が強いのか?」「ファイティングポーズを取り続けて、一体何を守りたいのか?」―。その人の、いじっちゃいけない部分や尊厳のようなもの、その理由までもが、だんだん分かるようになるのです。

 だからこそ、会話の中で急所や地雷を外せるし、あるいは話し合ったり、注意しなければならない時も、傷つけない言葉選びと伝え方ができるようになります。

 褒めトレーニングをした結果、コミュニケーション力も上がる、ひいては仕事でも自分のやりたいことが通りやすくなる。結局メリットしかないと思っています。

縁を使い捨てない

 褒めると同時に、僕がこれまで大切にしてきたことは、安直に人にマイナス評価を下さないことです。

 組織で働いていると、人事異動で自分の部署に新しいメンバーが入ってくることはよくあります。

 僕が上司として気をつけてきたことは、その人の前部署での評判がどんなに悪くても、あるいは良くても、その評判を鵜呑みにしないということ。なるべく先入観のない視点でその人を捉え、できるだけプレッシャーをかけないように、得意分野を伸ばす、ということを心がけてきました。

 逆にダメな部分に気がついた時も「そういうところ、直したほうがいいぞ」と、フラットに伝える。

 そうすると、前部署でパワハラにあってメンタルが少し弱っていた若手も、やりがいが見出せなくなっていた中堅も、元気になって、みるみる仕事がデキる人間になってくれることが多い。その後、出世した姿を見ると嬉しくなります。

 実は一時期、社内で「佐久間の部署は再生工場」なんて言われたこともあったほど。人のことを簡単に見捨てない、前評判というフィルターをかけて人のことを評価しない。これはせっかくできた縁を大切にする、ということでもあると思うのです。

佐久間宣行(さくま・のぶゆき)

1975年福島県生まれ。テレビプロデューサー、ディレクター、演出家、ラジオパーソナリティ、作家。1999年テレビ東京入社。「ゴッドタン」「あちこちオードリー」「ピラメキーノ」などを手がけ、2019年から「オールナイトニッポン 0(ZERO)」に最年長パーソナリティとして出演。2021年テレビ東京退社。「オールナイトフジコ」(フジテレビ)、「伊集院光&佐久間宣行の勝手に『テレ東批評』」(テレビ東京)のMCとしても活躍している。

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2024.09.09(月)
文=佐久間宣行