この記事の連載

◆4位『ボールアンドチェイン』南Q太

 高校生のひとり息子は愛おしく“そこそこ幸せな専業主婦”をやって来たと思いたい。けれど、夫とは家庭内別居状態の〈あや〉。

 もうひとりの主人公は、性自認に揺らぐ会社員の〈けいと〉。恋人の独占欲、けいとを理解することなく自分の理想を押し通そうとする態度に辟易し、彼から離れていきます。

 “ボールアンドチェイン”とは「鉄球と鎖」、すなわち足枷のこと。知らないうちに自分を縛りつけているのは社会なのか、それとも自分自身なのか。異なる世代のふたりを軸に、性別やそれに基づく古い常識にとらわれずに生きるための道程を丁寧に描く物語です。すべての人にとって間違いなく「我が事」である―己を顧みながらじっくり読みたい、今年一番の話題作。

「重要課題を日常的な物語として読ませる巧みさに感服します」(編集者・ライター・作家 粟生こずえさん)

「正体不明な息苦しさから脱却するヒントを得られる作品」(ブックライブ書店員 書店員すず木さん)

「古い性別役割や結婚観と、アイデンティティとの戦いを描く」(少女マンガ研究家 和久井香菜子さん)

編集者・ライター・作家
粟生こずえ(あおう・こずえ)さん


ブックライブ書店員
書店員すず木(しょてんいん・すずき)さん


少女マンガ研究家
和久井香菜子(わくい・かなこ)さん

2024.09.06(金)
文=粟生こずえ
写真=平松市聖

CREA 2024年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

楽しいひとり温泉。

CREA 2024年秋号

楽しいひとり温泉。

定価980円

CREAがはじめてひとり温泉を特集して7年。当時は「女性がひとりで温泉なんて!」と驚きを持って受け止められたこのテーマも、いつか珍しくない光景となりました。そして8年目となる今年、「ひとり温泉」は次なるフェーズへ。コロナ禍を経て、進化する“温泉地”を舞台に、めぐる旅を大特集します。いまこそ、めぐるか。それでも、こもるか。さあこの秋こそ、楽しいひとり温泉へ!