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◆3位『環と周』よしながふみ
年齢も性別もさまざまな、人間同士の「好き」の感情をやさしく紡ぐ連作短編集。現代の夫婦、明治時代の女学生同士、独身女性と少年、復員兵の男たちに江戸時代の男女―これらの主人公の名前は全話「環」と「周」。本作はいろいろな時代に生きていた環と周の物語です。
常にそばにいるとは限らないし、激しくむさぼるような愛でもない。しかし、たったひとりの特別な相手に注がれるまなざしのかけがえのなさが深く心にしみ入ります。
この世に生まれ、大切にしたい人とめぐりあい……しかし、別れは必ず訪れる。その理を広い視野でながめ、他人と幸せな瞬間を共有するという奇跡に感謝したくなります。くり返し読むほどに味わいを増す一冊。
「人生のままならなさと、確かに存在した幸せな瞬間と。生きるということを噛みしめるような作品」(フリーアナウンサー・俳優 宇垣美里さん)
「内容や表現が凄いのはもちろん、1巻で完結する連作として怖いぐらい完璧」(ライター 門倉紫麻さん)
「一話一話が舞台を観に行ったような充実感」(マンガ司書 みさき絵美さん)
2024.09.06(金)
文=粟生こずえ
写真=平松市聖