人生のすべてを教えてくれたクライミングに恩返しがしたい

――セカンドキャリアでも相変わらずの獣道。引退してもなお、どうしてそれほどスポーツクライミングに情熱を捧げられるのですか。

野口 私の人生はすべてクライミングに教えてもらいましたから。壁の厳しさも、壁を破る快感も。伴侶にも出会わせてもらった。だから恩返しがしたいんです。

 今の段階で公にしていいかどうか分からないけど、地元の龍ケ崎市をスポーツクライミングの街にできたらと思っています。これだけ世界で活躍できる選手が育っていても、国際大会ができるような大きな施設がまだ日本にないのが現状。それこそ五輪のためのトレーニングもできるような施設を作ることが一番大きな願望です。

 もちろんその傍にはスキルに合わせた壁も常設し、アスリートだけじゃなく初心者の方、子どもからお年寄りまで楽しめるようにする。そこでジュニアの育成も手掛けられたらと思っています。

 龍ケ崎市は都心から電車で1時間ほどですし、成田空港からも近いので、W杯や世界選手権を開催するにも適している。いずれ、育成に携わった選手たちがそこで開催される世界大会に出場するという未来を描くと、ますますやる気が沸いてきます。

「彼は好き嫌いが激しいんです」「ゲームばっかり。安楽選手とも…」野口啓代(35)が語る夫・楢﨑智亜(28)の意外な私生活と“パリ五輪までの日々”〉へ続く

2024.08.19(月)
文=吉井 妙子