この記事の連載
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- 三宅健インタビュー後編
ボーダーを超えられるのが、アイドルの特性
今やアイドルは、歌やダンスのみならず、お芝居、バラエティなどさまざまなフィールドで活躍するマルチな存在となっている。
「ボーダーを超えられるのが、アイドルの特性だと思っています。そのボーダーというのは、歌やダンスに限らないさまざまなジャンルの仕事をするということだけでなく、たとえば国境や文化の壁を越えるとか、そういうもっともっと広い意味で。それはある意味、透明性とも言えると思うんですよね。何色にも染まれるというか」
しかしその一方で、アイドルというと、いまだ世間的に未完成な印象を持つ人も少なくない。それゆえ“アーティスト”という呼称が使われることも。「あくまでもこれは僕の意見だけれど……」と話し出す。
「アーティストって、僕はゼロからものを作る人のことだと思っているんですよね。僕は、プロデュースはしているけれど、作詞作曲はしていなくて、楽曲を提供してもらっている側。でもそこにネガティブな気持ちはなくて、自分がアーティストさんとコラボレーションして作ってもらった楽曲を、どういう形で表現してアウトプットしていくかは僕自身に委ねられているわけです。そこで何かに染まることで、また新たなものになれる可能性がいくらでもあって、つまりジャンルレスなんですよね。その自由度の高さが、アイドルの面白さかなって」
その言葉には、ゼロからものを生み出すアーティストへの深いリスペクトも込められている。
「ゼロから何かを生み出すって、並大抵のことじゃないと思うんです。自分の身近には、そういう仕事をしているクリエイターがたくさんいて、生み出すことの苦しみを知っているからこそ軽く扱いたくないし、そこに対する敬意は払いたいです」
多彩なアーティストたちとの化学反応を楽しむ
今回、三宅さんは、新天地に活動の場を移して初のアルバムをリリース。タイトルに冠したのが『THE iDOL』。ジャマイカとハワイアンにレゲエの要素を加えたジャワイアンレゲエという新しいジャンルを確立したMicroさんのような大ベテランのほか、ソウルやR&Bとヒップホップとを融合させた洗練された楽曲で注目を浴びるSIRUP、YouTubeやTikTokで話題を呼び今注目を集めるWurtSや、ポップさとシュールさの入り混じった独自の世界観が話題の現役大学生シンガーソングライター・ミヤケ武器のような新進気鋭まで、ジャンルもキャリアも出自も違う多彩なアーティストたちが楽曲提供として参加。まさに言葉通りの多彩で豪華な一枚となっている。
「それぞれの方々とかなり密にコミュニケーションをとって、こんな楽曲にしてほしいというオーダーは結構細かく伝えさせていただきました。そのうえで、そのオーダー通りのものというわけではなく、アーティストの皆さんそれぞれが僕が提示したレファレンスよりもさらに素晴らしいものを作ってくださったと思っています」
今の自分のリアルな思考や感情をリリックに込めて
収録曲の中には今年1月に配信リリースした、元Def TechのMicroさんによる「iDOLING」も。これは、同じMicroさんが手掛け、2010年にソロ曲として発表した「“悲しいほどにア・イ・ド・ル”〜ガラスの靴〜」の続編であり、アップデートバージョンとして位置付けたもの。
リリース時のコメントには、「『悲しいほどにア・イ・ド・ル』がその時のリアルを閉じ込めた作品であるならば、『iDOLING』は、決して切り離すことができないこれまでのアイドル人生、過去・現在・未来、これからのアイドル人生への思いや願いを封じ込めました」とある。
「もともと『悲しいほどにア・イ・ド・ル』という楽曲自体が、当時の自分の恋愛観だったりアイドル観だったりを歌ったもので、『iDOLING』は、あれから十数年を経た今の自分のリアルな思考や感情を歌うということが、そもそものコンセプトでした。
制作に入る前にMicroと長い時間、何度も話を重ねて、その上で彼がリリックを書いてくれたのですが、赤裸々に語った僕の言葉をうまくオブラートに包みながら、でも漏れ出る想いをちゃんと残してくれていて、韻の踏み方も含めて、自分の想像以上のものを仕上げてくれていて。その匙加減の絶妙さに、やっぱり彼は本当に言葉の魔術師だなと思っています」
時代という名の大きな渦の中心に身を置き、早くからアイドルとして華々しい場所で活躍してきた。しかしそんな自分自身を、そして自分が置かれた場所をどこか冷静に俯瞰しているように見える。だからこそこんな質問を投げかけてみる。アイドル・三宅健のセールスポイントとはどこだと思いますか?
「自分で言うのはなかなか難しいですよね。でも、このアルバムを聴いていただければ、それがわかるんじゃないですか(笑)」
そう言ってにやりと笑みをのぞかせた。
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三宅 健(みやけ・けん)
1979年7月2日生まれ。神奈川県出身。2023年7月最初のTOBEアーティストとして出発することを発表。表現者として、新たなエンターテインメントの形に挑戦していくこと、そして新たな「アイドル像」を描いていくことを表明した。New Album「THE iDOL」が6月5日にリリース。豪華アーティストによる提供楽曲と進化し続けるKEN MIYAKEの表現力を詰め込んだ表情豊かなアルバムとなっている。公式YouTubeの『KEN MIYAKE』チャンネルにて毎週火曜日21時には『 健ちゃんの食卓』 、毎週木曜日 21時には『三宅健のゆるりと生配信』を配信中。今年6月22日・23日には東京・有明アリーナにて単独コンサート『2024 Live Performance The Otherside : Another Me Presented by KEN MIYAKE』の開催。
後日、Amazonプライムにて配信が予定されている。
「THE iDOL」
2024年6月5日にリリースされた、TOBE移籍後初のアルバム。昨年9月にリリースしたSIRUP提供の「Ready To Dance」、今年1月にリリースしたMicro提供の「iDOLING」のシングル曲のほか、三宅さん自身がオファーしたアーティストたちによる書き下ろし楽曲が収録されている。初回生産限定盤Aにはオリジナルキーホルダーが、初回生産限定盤BにはMVや特典映像などが収録されたBlu-rayがセットに。通常盤にはボーナストラック2曲を加え、全14曲が収録されている。
2024.07.11(木)
文=望月リサ
写真=SAKAI DE JUN
ヘア&メイク=井手賢司(UM)
スタイリング=井田正明