ちなみに次の作品については、「『姑獲鳥の夏』に近い感じのものはつくれますか?」という依頼をしました。「近い感じ」といっても、『姑獲鳥の夏』に始まるシリーズの続きを書いてください、という依頼ではありません。民俗学がモチーフの本格ミステリというくらいの意味でした。シリーズが長く続いていることをご存じの読者にとっては、ちょっと信じられないかもしれませんが、その時点で僕は『姑獲鳥の夏』に続きがありうるとはまったく思っていなかったのです。
作中に登場する人物たちは、あくまでこの作品の仕掛けや構造のために用意されており、完璧な形で完結しているので、もう一度登場させることは不可能だと思い込んでいました。ですから、次の作品として『魍魎の匣』が手渡されたときは、まさに「目から鱗が落ちる」ような衝撃でした。
〈「これは売れない」どれだけ才能のある作家でもストップをかける「手を出してはいけない小説ジャンル」とは?〉へ続く
小説編集者の仕事とはなにか?
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講談社
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2024.06.04(火)
著者=唐木 厚