「自分軸があること」と「独りよがり」は紙一重
でも一方で「自分軸があること」と「独りよがり」は紙一重だということも知っています。もっと自分を手放して、素直になって、どんな人にも、どんなことにも「あらあ、いいわね~」と言える、かわいいおばあちゃんになりたい。だったらどうしたらいい?
そんな時、店頭に立つ板倉さんの笑顔が浮かんできました。お店でお客様を迎えるとき、ドアの前で「この人はいい人だからどうぞ」「この人は、ちょっと難しそうだからご遠慮ください」と区別することはできません。訪ねてきてくれたなら、どんな人も受け入れなくてはいけない。そうか! あんなふうにまずは、「入り口」を広く開けておけばいいのかも。
扉を開けておくことは、相手に対して「私はあなたのことを受け入れますよ」というサインになります。誰でも「これいいでしょ?」と手の中のものを差し出した時、「ふ~ん」と気のない返事をされたら、それ以上、その人の中へは踏み込まないもの。
でも「うわ~、ほんとだね~」と笑顔を返されたら、「ね、そうでしょ、そうでしょ!」と言いたくなる。そうやって、人と人は心を開き合い、より奥にある大切なものを交換しあうことができるんじゃないかな。
私にとって「いい」かどうかの判断は、もっと後でもいいのかも。というよりも、世の中のものはすべて「いい」「悪い」に分類されるわけではないのかも。そう考えると、ぐんと気が楽になりました。「私が私であること」を手放したら、まったく踏み込んだことのない世界の住人とも、何かを交換しあえるようになるかも。
そういえば、推し活に夢中になっている後輩の話は、なんだか面白かったなあ~。興味がなかった漫画だけれど、勧められて『宇宙兄弟』(講談社)を読んでみたら、すっかり夢中になったんだったなあ。これからの暮らしで、大切にしたいのは、「いい」「悪い」をジャッジすることではなく、隣にいる人と心を通わすひとときなのだと、やっと答えが見えてきた気がします。
初めての人と出会った時、まずは相手の話に耳を傾けてみる。大事なのは、「いい」「悪い」をジャッジすることではなく、心を通わすひととき
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2024.06.04(火)
文=一田憲子