日本中を車中泊しながら旅するカップルYouTuber、サニージャーニー。こうへいとみずきカップルのスタートは順調だったものの、旅の序盤に、みずきが体調を不良を訴える。病名は「すい腺房細胞がん」。そして宣告されたのは「ステージ4」「余命4カ月から2年」……。
そんなサニージャーニーのふたりが書き上げた本『日本一周中に彼女が余命宣告されました。』(双葉社)には、窮地に立たされたふたりがぶつかった壁と、今を生きるためにふたりがどう立ち向かったかが克明に描かれている。
今回は、がん専門チャンネルを運営し、みずきのセカンドオピニオンも行った宮崎善仁会病院・腫瘍内科医の押川勝太郎氏による、医師から見た病状、そしてがんを巡る時代背景を抜粋してお届けする。
サニージャーニーとの接点
がんというのは個人差が大きくて、同じ部位の同じステージでも、経過や副作用の出方が全く違うということが多いです。それで、僕がYouTubeでやっていた『がん防災チャンネル』の中で、特に影響力が強い芸能人の方のがん闘病動画に関して、がん治療医の立場から解説をつける「有名人がん解説シリーズ」という再生リストを自主的に始めたんです。
その一環で、あるときテレビで紹介されていたサニージャーニーを見て、YouTubeでもすごく注目されているし、すいがんで余命まで宣告されているような状況だというので、それが本当にどういう意味なのかということを、主治医ではない第三者の立場の専門家が客観的に解説する意図で、動画を作ってアップしたんです。それを、確かみずきさんの知人がご覧になって、コメント欄を通じてご連絡をいただいたんだと思います。
診療情報やCT、報告書も確認
そしてYouTubeでコラボレーションしようという話が出たのですが、だったらセカンドオピニオンという形にして、主治医の方に診療情報提供書(いわゆる「紹介状」)を出すことにOKをもらえたら、それを元に僕が解説をするということにしましょうとお伝えしたところ、主治医の方から「自由にやっていい」と言っていただけたので、コラボをすることになりました。
提供情報自体はCT画像とそれを専門の放射線科医が読影した報告書、それからERCPという内視鏡検査の正式報告書や血液検査の報告書など、病院による正式な検査の結果が何十枚にもわたってあるわけです。
今回、詐病はあり得ない
それだけ詳細な検査報告は、とてもじゃないけど自分たちで作れるようなものではありませんから、詐病などあり得ない話なんですよね。
その中には、正式な表現として「UR-M」と書かれていました。「UR」は「Unresectable」の略で「切除不能」、「M」は「Metastasis」で「遠隔転移」のことで、括弧書きで(左鎖骨上窩リンパ節転移)と書き添えられていました。一般に言うステージ4を指す状況を、より専門的な言葉で表していたわけです。
実際にCT画像でも、胆管ステントが入った状態ですい臓周囲のリンパ節がゴリゴリに腫れた、かなり大きな腫瘍が見られました。
2024.05.27(月)
文=押川勝太郎、双葉社編集部