「耳管開放症(じかんかいほうしょう)」――。聞きなれない病名ですが、症状が重くなると日常生活や仕事にも支障が出るこの病気。実は若い女性がかかりやすいそうです。原因は? そして治療法は? 慶友銀座クリニックの大場俊彦先生に解説していただきました。
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自分の声や呼吸音が頭に響く
耳管開放症(じかんかいほうしょう)は、その名の通り、耳管が開放されたままになる病気です。耳管とは、耳の鼓膜の奥の中耳と、鼻の奥にある上咽頭をつないでいる3センチほどの管。
「普段は閉じていますが、開いたままになると、自分の声が頭の中に響き渡る一方で、相手の声は聞こえにくくなります。自分の呼吸音が大きく聞こえるといった症状も、耳管開放症の特徴です。鼻から息を吸ったとたん、鼓膜に空気が入ってくると感じるのです。難聴ではないので、聞こえることは聞こえるのですが、その違和感からくるストレスは大きい。ときには、歩行中にふらつく方もいらっしゃいます」
耳管開放症は、2010年、超メジャーな女性歌手が症状を訴え、一時休業宣言したことで知名度があがりました。また、最近では、ファッション誌で活躍する人気モデルも「持病」として公表しています。 2人の共通項は、「スリムな若い女性」ということ。大場先生によると、これは偶然ではないようです。
無理なダイエットが病気の要因に
「耳管開放症の患者さんは、特に女性に多く、20代から増え始め、30代40代に多いとされています。私自身もスリムな妙齢の女性に多いと感じております。 」
とくに目立つのは、急激なダイエットをして体重を落とした人や、極端にやせていたりする人だそうです。
「体重の減少と、耳管開放症の因果関係はまだ解明されていませんが、体重が減っていく過程で、耳管の周囲にある脂肪組織が減ったり硬くなったりするために、耳管の弾力性が失われて閉じにくくなるのではないかと考えられています」
軽症の場合は、耳鼻科の治療に加えて、体重を増やすことで症状が改善することも多いそう。過剰なダイエットをしている人は、医師のアドバイスのもと、少しずつ体重を元に戻すようにしましょう。「太ればいいのね」と、栄養バランスを無視して好きなものばかり食べていると、今度は生活習慣病をひきおこし、ほかの耳の病気を併発する危険があります。
「ストレスも要因の一つと考えられるので、体重管理のほか、血流の改善、こまめな水分補給、心身のリラックスといったことに努めれば、軽症の患者さんなら、8割以上は自然に治癒しています」
2014.03.03(月)
文=中津川詔子
写真=vita khorzhevska / Shutterstock.com