「危険ないびき」は寿命にかかわる
いびきには、「単純性いびき」と、「睡眠時無呼吸によって起こるいびき」があるそうです。後者にあてはまる人は、本格的な治療が必要と、大場先生は警告します。
「睡眠時無呼吸の人は、周りに迷惑をかけるほど大きないびきをかくことが多い。それだけでなく、ほうっておくと、生存率にもかかわります。睡眠中に呼吸が止まると、体に十分な酸素が供給されず、内臓や脳に大きな負担をかけるのです」
恐ろしいことに、狭心症、心筋梗塞などの合併症を引き起こす危険もあるとか。「たかがいびき」とあなどってはいけません。
大場先生のいびき外来では、まず、鼻づまりの有無をチェックします。鼻づまりが原因のいびきなら、治療はシンプル。レーザーや高周波ラジオ波治療など、日帰りの手術で治療は完了します。
鼻が原因ではない場合、舌やのどのまわりが原因の睡眠時無呼吸の疑いが出てきます。
いびき治療でアンチエイジング効果も
睡眠時無呼吸と診断されても、ちゃんと治療法はあるのでご安心を。
大場先生のおすすめは、シーパップ(CPAP)という器具を使った治療法。
「シーパップは鼻から空気を送り込む装置で、寝ている間に鼻に装着します。うまくいくと無呼吸も10分の1ほどになり、疲れもとれて、驚くほど元気になります」
シーパップを使い始めた患者さんは、目に見えて血色がよくなり、肌もつやつやになったとか。「いびき治療だけでなく、アンチエイジングにも有効だと実感しています」と大場先生。
ただ、シーパップは装着が面倒だったり、定期的に通院しなければならないことから、途中で挫折してしまう人も。
もっと手軽な治療法がいい人には、専用のマウスピースを装着する方法もあります。
「これも寝ている間に装着するものですが、歯並びを矯正するマウスピースと外見はほとんど同じ。これなら若い女性でも、そんなに抵抗はないのではないでしょうか」
睡眠時無呼吸ではない場合は、肥満や口のまわりの筋肉がゆるむことで、のどの奥が圧迫されている可能性大。その場合、ダイエットの指導や、大場先生が実践する「いびき体操」(YouTubeに動画あり)の指導をおこないます。寝ている間に気道をふさがないよう、舌の筋肉を鍛えるのです。
いずれにせよ、「鼻づまり」以外のいびきの場合、長期にわたる治療が必要。こまめにケアをしてくれる、信頼できる先生を見つけましょう。
いびきは、ときには鼻やのど以外に原因がある場合もあるとか。そんなとき、口腔外科や呼吸器科など、耳鼻科以外の専門医を紹介してくれる先生なら、より安心です。
お話をうかがったのは……大場俊彦先生 (慶友銀座クリニック院長)
医学博士。慶応義塾大学病院、国立小児病院、東京都済生会中央病院などを経て、2005年に開業。20~30代の働く女性の患者が多く、仕事やライフスタイルに合わせた医療を提供している。得意分野はアレルギー治療といびき治療。二児の父親。
URL http://www.ginzaclinic.com/index.html
2014.03.01(土)
文=中津川詔子
写真=Valua Vitaly / Shutterstock.com