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辞めようかな、続けようかなみたいな感じだったのが……

坪田 小学生の頃からバレーを続けていると思うんですが、バレーボールが楽しいという感覚はずっとあるんですか。

柳田 楽しいという感情でバレーができるようになったのは、高校くらいからでした。始めた頃は、厳しいし勝てない時期があって、中学時代までは結果も出ずに正直しんどかったです。バレーは身長がある程度ものをいう競技なので、身長が追い付いてきて、やれることの幅が1回ぐんと広がる。

 僕の場合は自分で考えながら、これが通用するのか試行錯誤することで、ベースがぐんと広がったタイミングが高校時代です。それまでは辞めようかな、続けようかなみたいな感じだったのが、辞めずにここまでこられたのは、本当に運に恵まれたと思います。

坪田 高校時代を経て色んなことが出来る楽しさに気づき始めて、今もその感覚に変わりはないですか。

柳田 むしろ楽しさの種類は、確実にキャリアとともに広がってきています。昔はバレーをすることが楽しかったけど、今はバレーを通じて何か繋がりが増えたり、練習やトレーニングのプロセスが厳しい時でも、試合を楽しくするためにやっていると思える。僕にとってバレーは、ニアイコール人生みたいになっていて、バレーが楽しいから、自分の人生が楽しめるような状況に今ではなっていますね。

坪田 柳田選手にとってのバレーボールは、僕にとっては小説を書くことに行きつくような気がするんです。小学校2年生ぐらいから小説を書きはじめて、中学生の時に『探偵はぼっちじゃない』という前の作品でデビューして、今作の高校のバレー部を舞台にした『八秒で跳べ』は、5年ぶりの2作目になるんですけど……。

柳田 えっ!? 5年ってオリンピックの間より長いじゃないですか。

坪田 本当に長くかかって、完成した時は安堵しました。でも、それまで書いていて楽しくないと思うことの方が多くて、ずっと小説を書いていくつもりだったけど、この先どうなっていくのか不安も抱えていました。お話を聞いていて、何となくその先が見えたような気がして嬉しいです。

2024.04.05(金)
文=第二文芸編集部
写真=榎本麻美
ヘアメイク=k.e.y小池康友
協力=東京グレートベアーズ