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シャオシャオに異変?

 パンダの観察も飼育係の大切な仕事。普段の様子や行動をしっかり知っておき、観察しながら疑問を持つことを大切にしているそうです。

 例えばこんなことがありました。いつもなら飼育係が作業を始めるとすぐ起きてくるシャオシャオが、ある日の朝はまったく起きてこなくて、飼育係は不思議に思っていました。少し様子を見てから声をかけても、シャオシャオはぼんやりしています。さすがにおかしいと思った飼育係は獣医師に伝えました。すると数時間後、シャオシャオは普段より粘膜の多い糞を出したら、ケロッとした様子で元気になりました。「幸い大事に至りませんでしたが、朝の小さな疑問が体調の変化に気づくきっかけになりました」と飼育係は振り返ります。

 飼育係はパンダの24時間の行動を「休息」「活動」「採食」に分けて1分ごとに記録しています。このほかマーキングや水浴びなども記録します。これを毎日4頭分行うのは大変ですが、普段の健康管理だけでなく、交配のタイミングの見極めにも役立っているそうです。

糞は全て集めて重さを記録

 衛生管理にも気をつけます。パンダ舎が汚いとパンダが病気になる恐れがあるため、毎日しっかり清掃し、週1回は消毒します。

 清掃時に飼育係が注目するものがあります。糞です。糞の形や量やにおいには、健康状態を知るための情報が詰まっています。「ほかの動物では、あまりやらないと思いますが、私たちは清掃の際にパンダの糞をすべて集めて、その重さを記録しています」(飼育係)。パンダの消化器官は短いので、繊維質の多い竹は2割ほどしか消化できず、約8割はそのまま出てきます。つまり糞の重さが分かれば、大まかな採食量を把握できるのです。

 一方で、パンダの見せ方にも気を配ります。観覧者がパンダを見やすいように、竹は観覧通路の近くやパンダが正面を向く場所などに置きます。また、パンダは座ったり寝転んだりして食べることが多いので、擬木(ぎぼく)・擬岩(ぎがん)の近くなどパンダが食べやすい場所に竹を置くようにもしています。

 パンダの好物のリンゴやパンダ団子を擬木に置いて、木登りの行動を引き出すこともあります。これは、パンダは木に登るのが上手だと観覧者に知ってもらうとともに、パンダにも良い刺激になっています。

» パンダの未来を支える仕事 パンダにまつわる仕事#3

中川 美帆 (なかがわ みほ)

パンダジャーナリスト。早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(11カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著に『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)がある。
@nakagawamihoo

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2024.03.17(日)
文・撮影=中川美帆