森山の視線が向かう空間的な広がり
なかでも話題を呼んでいるのが最後のセクションだ。沖縄を扱った「1974沖縄」と近作の「2013沖縄」を対照的に展示。「1974沖縄」では70年代の沖縄が粒子感のあるモノクロームで捉えられているのに対し、「2013沖縄」は滑らかなカラーになっている。
森山といえばコントラストの強いモノクロームのプリントがよく知られているが、近年はデジタルのカラー写真にも積極的に取り組んでいる。またさらにこれらの沖縄の写真群が新宿や北海道の写真と対比されることによって、森山の視線が向かう空間的な広がりも示されている。
森山が一貫して採用している方法論は路上でのスナップショットだ。その蓄積は膨大な時間と空間の記録であると同時に、「写真とは何か」という根源的な問いかけにもなっている。ひとりの写真家の軌跡を知るだけではなく、60年代以降の日本の現代写真の歩みを理解するうえでも興味深い展覧会だ。
鈴木布美子 (すずき ふみこ)
ジャーナリスト。80年代後半から映画批評、インタビューを数多く手掛ける。近年は主に現代アートや建築の分野で活動している。
Column
世界を旅するアート・インフォメーション
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2014.02.26(水)
文=鈴木布美子