シノポルトガル様式の古き良き街並みを歩く

 プーケットの魅力はビーチだけではない。中国とポルトガルの文化が入り混じるオールドタウン(旧市街)は、ほかの街にはない魅力を放つ街だ。オールドタウンは、島最大の繁華街、プーケットタウンの一角にある。プーケットタウンは、今から4世紀以上前、スズの産出地だったこの地に、鉱山の労働者として、マレーシアや中国本土から多くの人たちが移住し居を構えたのが始まり。なかでも当時の名残を色濃く残すのが、オールドタウンと呼ばれる一角だ。

ヒストリカルな建物が並ぶ通りは、いまでも現役の、人々の生活の場。

 中国からの移民や華僑が多く住むチャイナタウンなら、バンコクやほかのアジアの都市にもある。だが、ここに暮らしたチャイニーズは、当時の貿易相手国であるポルトガルのスタイルを生活に取り入れてきたことから、ここの街には、ほかに類を見ない独特の文化が育まれたのだ。

 ノスタルジックな街並みに建つのは、今から約100年前に建てられた中国ポルトガル様式の建物。ヤワラー通りには、それらを改装した洒落た造りのカフェやバー、アンティークショップが並び、人気を集めている。とくにここ数年はカフェブームで、奥行きの長い建物の中にある静かな中庭や、歴史を重ねた重厚な建物を利用したカフェが続々と登場している。

古い建物を改装した洒落たカフェと、庶民派の店が混在する。

 クラビー通りには、大きな屋敷が残る。1934年に建てられ、2001年まで中国語の学校として使われていた建物をリニューアルしてつくられたのが、「プーケット・タイファ博物館」。館内には、中国・福建省からプーケットへ渡った中国人移民と錫採掘の歴史、食文化などが紹介されている。

プーケット・タイファ博物館では、古い建物を利用して、プーケットのチャイニーズカルチャーを紹介。

Phuket Thaihua Museum (プーケット・タイファ博物館)
所在地 28 Krabi Rd,Taladyai Subdistrict Muang Phuket
電話番号 +66-76-211-224
URL http://www.thailandtravel.or.jp/detail/sightseeing/?no=225

 タラン通りの店は、イスラム系の生地屋や、軒先でロティを焼くマレー系の店、漢方薬局など昔ながらの商店がほとんど。わずか数百メートルの通りに、中国系とイスラム系が混じりあい、ついタイにいることを忘れてしまいそうになる。

中国、イスラム、マレー系の店が点在する通りは、エキゾチックな雰囲気。

 開放感溢れるビーチとはまた違うプーケットの姿を垣間見ることができる、オールドタウン。半日もあれば散策できるので、ぜひリゾートから足を延ばしてみたいものだ。

芹澤和美 (せりざわ かずみ)
アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネート。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.serizawa.cn

2014.02.20(木)
文・撮影=芹澤和美