飯間 そのあたりから私も新聞報道などで知っています。辞書マニアの方が実際に大学祭に足を運んでその辞書をお迎え(入手)したという話も聞きました。大変な人気で、すぐに売り切れたそうですね。
小出 ありがたいことに、500円で販売していた初版70部は予約分で完売し、急遽増刷した70部もほぼ完売となりました。
飯間 私もとても欲しかったのですが、指をくわえて見ているしかありませんでした。悔しくて、関係の深い三省堂の編集部に言ったんです。「学生目線で作ったユニークなオタク用語辞典があります。1冊手に入りませんか」と。でも、私が言うまでもなく、編集部でも注目していたようです。
小出 私、すごくはっきり覚えています(笑)。大学の事務局からある日、「先生、大変なことになりました!」と電話がかかってきました。「三省堂の方から、辞書を1冊欲しいとお話をいただきました!」と。
飯間 三省堂の動きは素早かったんですね。その後どうなったか、私には内部のことはうかがい知れませんでしたが、実は大増補して出版する計画が進行していたんですね。当初、大学祭で売った辞書には何語収録されていたんでしたっけ。
小出 821語です。この時はゼミ生7人で編集していました。
飯間 その時点ですでにかなりの規模だったわけですが、今回は12人のゼミ生や元ゼミ生の皆さんが協力して、1559項目を収めることになりました。ほぼ倍増です。従来の書籍で、この規模のオタク用語辞典はありません。しかもこの増補の作業をわずか1年程度で行った。これがどれだけ大変な作業かは、辞書を作る私には痛切に分かります。楽しさとともに苦しさもあったでしょう。言葉を扱うって、本当に神経を使いますね。少しずつ命を削られるというか。
小出 本当にそうですね。学生も私もちょっと削られたような気がします(笑)。連日連夜オンラインで集まって、みんなで深夜まで一語一語チェックした時間は忘れられません。
2024.01.29(月)
文=飯間浩明、小出祥子