大久保 うちに秘めた熱いパッションのようなものを、最近の佳子さまに感じます。
ジェンダーを語ることの自己矛盾
河西 公務を重ねるうちにライフワークを見つけたという面もあると思います。大学を卒業されてしばらくは模索が続いていたのが、徐々に自分の役割が見えてきたのだと思うんです。ジェンダーの問題が社会にあり、自分が発言すれば反響が起こり、考えてくれる人も出てくる。皇族の公務というのは、それが呼び水となって事態を動かす力があります。そのことに気づき、一生懸命取り組んでいると感じます。同時に大丈夫かなと思ってしまったりもするのですが。
矢部 ジェンダー問題を突き詰めると、女性皇族に人権がないことに行き着く。そういうことですよね。
大久保 皇室には制度的に男女の差別が厳然としてある。女性が天皇になれないだけでなく、さまざまな差別が存在する。でも佳子さまのお気持ちを忖度するなら、そういうことは取りあえず置いておき、皇族としての自分の立場を大いに活かしていきたい。そういう思いで活動されているのではないでしょうか。ご本人が制度に触れると、それは政治問題になるわけですから。
「家」と葛藤する佳子さま
河西 佳子さまは、今の社会をよりよくしていきたい気持ちが強い方ですよね。昨今の若者の特性でもあると、学生を見ていても思います。だから社会の状況を鑑みて、世代の声としてジェンダー平等を語っている。
一方で大久保さんのご指摘通り、彼女が生きているのはジェンダー平等からはほど遠い世界です。そういう制度の中にいながらジェンダー平等を語り続ければ、やがて自己矛盾に陥ることになります。それも先ほど言った「大丈夫か」の意味だったりします。
山口 佳子さま推しの女性の気持ちがだんだんわかってきました。佳子さまは十字架にはりつけにされたキリストのような存在なのですね。あのように現代的な女性が、いかんともしがたい「家」というものの縛りを背負い、葛藤している。
2024.01.23(火)
文=矢部万紀子