ラフレシアの生涯を見学できる奇跡の庭

まだ堅いつぼみたち。地面から直接生えているように見えるが、木の根に寄生している。

 ジャングルに分け入る覚悟を決めた次の瞬間、あまりにあっけなくその瞬間が訪れた。入園料を支払って10mほど歩いたところで、目の前の地面に赤い巨体が大きな花びらを広げていたのだ!

 ラフレシアはブドウ科の植物の根に寄生する花。根も茎もなく、栄養は寄生した植物から吸収しながら巨大な花を咲かせるという、特殊な進化を遂げた植物だ。いくつかの種類があり、サバ州では3種類のラフレシアが生息している。この「ナパルス・ラフレシア・ガーデン」で見ることができるのは「ラフレシア・ケイティ」という、ラフレシアとしては小さめの種類で、ラフレシアの特徴のひとつでもある強烈な腐敗臭はない。

直径1mほどのラフレシア。開花3日目だというのに既に花びらが萎れかけている。花の命はなんとも短い。

 根に寄生してから開花するまでに数カ月かかり、開花後はたった1週間ほどで枯れてしまう。なかなか花を見ることができないのは、特定の開花シーズンがあるわけではないので予想が難しいから。つぼみが膨らんできたところで、森の小動物に食べられてしまうこともあるという。保護のためのネットも張られていた。たまたま咲いているときにコタキナバルを訪れていればラッキーということなのだ。

土に還っていく花。ラフレシアの生涯を一度に見ることができた貴重な経験だった。

 キナバル公園の周辺にはラフレシアの群生地がいくつもある。ナパルス・ラフレシア・ガーデンと名付けられたこの群生地は、土地所有者の家の裏手にあった。群生地の手前には柵があり、見学は柵越しとなる。今回見ることができた花は柵に近い場所に咲いていたのでかなり近寄ることができて、ダブルのラッキーだった。場合によっては順番待ちになるほどの人気ぶり。地面にはいくつものつぼみ、開花後に萎れた花などが点在していて、その成長段階を一通り見学することができた。

入り口では写真が売られていた。ラフレシアが咲く土地を持っていたこの家族は、入園料と写真の売り上げで家を建てたのかもしれない

 今回は、ジャングルの中を延々歩くこともなく簡単にラフレシアを見ることができた。とはいうものの、開花のタイミングを予想して旅の計画を立てることは難しいし、サバ州政府観光局に問い合わせたり、そのオフィシャル日本語ブログ(欄外参照)をチェックしたり、現地でガイドに聞いたりして、ラフレシアが咲いているという情報をキャッチするアンテナも必要だ。やはり、ラフレシアは「幻の花」と呼ぶにふさわしい花だった。

マレーシア政府観光局
URL http://www.tourismmalaysia.or.jp/

サバ州政府観光局
電話番号 +60-88-212121
URL http://www.sabahtourism.net/jp

サバ州政府観光局オフィシャル日本語ブログ
URL http://kotakinako.wordpress.com/

たかせ藍沙 (たかせ あいしゃ)
トラベル&スパジャーナリスト。渡航130回超・50カ国超、海外スパ取材200軒超、ダイビング歴800本超。日々楽しい旅の提案を発信中。著書は『美食と雑貨と美肌の王国 魅惑のモロッコ』(ダイヤモンド社)、楽園写真家三好和義氏と共著の『死ぬまでに絶対行きたい世界の楽園リゾート』(PHP研究所)など。最新刊は薔薇でキレイになるためのMOOK『LOVE! ROSE』(宝島社)。
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トラベルライターの旅のデジカメ虫干しノート

大都会から秘境まで、世界中を旅してきた女性トラベルライターたちが、デジカメのメモリーの奥に眠らせたまま未公開だった小ネタをお蔵出し。地球は驚きと笑いに満ちている!

2014.02.11(火)
文・写真=たかせ藍沙