キャプテンを経験して心が分厚くなった気がします

――先ほど「グループでのキャプテンという経験に重なった」というお話がありました。ご自身の経験と照らし合わせて感じたことなど、ぜひ教えてください。

 樹の部下には子供を持つママだったり、いろいろな事情を抱えた女性がいます。樹自身は「仕事も大事だけど、それぞれの人生があるんだから」と考えるタイプで、私もその気持ちに共感します。けれど、実際にグループ全体で仕事とプライベートのバランスを保つことの難しさもまた感じていました。

 グループ自体、組織としては仕事をちゃんと進めていかなければいけない、でもそれぞれの私生活もある、仕事相手もいますしファンもいてくださる……と様々な要素がありますし、メンバーそれぞれの心と体のコンディションも毎日異なります。そこでなんとかまとめていく難しさは身に染みていたので、「ああ、一緒だなぁ」と共感していました。

――菅井さんが編み出したまとめていくコツは何でしたか?

 キャプテンを経験した今でもコツも正解も見つけられているわけではなくて(苦笑)。自分の性格が、みんなを引っ張っていったり、「もっとこうしよう」と積極的に意見をしていくタイプではなく、どちらかといえばみんなのやる気が出るようにそっと行動するタイプでした。だから、少しでも前向きな言葉をかけたり、率先してライブ前に円陣を組んだりして、グループ全体が前向きになるようには心がけていました。

――学生時代から、ずっとリーダータイプだったんですか?

 まったくそんなことはないんです。クラスでも学級委員に立候補もしませんでしたし、推薦もされないタイプでした。グループ活動で初めてキャプテンに任命されて、最初は「え、私…!? どうしよう」と思っていましたし、リーダーになって自然と性格が変わっていきました。

――性格はビフォー・アフターでどうなったんでしょう?

 自分で言うのもなんですけれど、心が分厚くなった感じがします。「なんとかなるでしょ」と思えるようになりました。何かあっても「そのときがくればきっとどうにかなるよな」って。自分が緊張しているときに、「ああ、緊張する」と言葉に出すともっと慌てるけど、「大丈夫、大丈夫」と言っていたら本当に大丈夫な気がしてくる、というような感じです。前向きな言葉を口に出すようにしていたら、気持ちも自然とタフになれたかなと思います。

――いまおひとりで俳優業に軸足に据えた今、心が分厚くなった経験はご自身の強みになりますよね。

 そうかもしれません。もちろん緊張してしまうときもあるんですけど、たいがいのことは、「うん、大丈夫じゃないかな」と思えるようになったのは、いろいろな経験を踏ませていただいたからかな、と思います。

2024.01.08(月)
文=赤山恭子
写真=今井知佑