シャワー代わりに川で沐浴、トイレは大地に穴を掘って……

 野営なので、もちろんシャワーもトイレもない。シャワーは川まで行って沐浴、トイレは、少し奥まった森の地面にスコップで掘った穴。川だろうがなんだろうが、とにかくシャワータイムは必須だ。熱帯雨林の日中は湿度がほぼ100%、気温は30度を超え、かなりの汗をかく。日没後、川に係留してあるボートに乗り、桶で水をすくって水浴びをしなければ、身体がべたべたして気持ち悪くて堪えられない。ベースキャンプから川までは歩いて2、3分なのだが、日没後の森は漆黒そのもので、懐中電灯の灯りだけをたよりに歩くのは勇気がいる。しかも、メンバー中、女性は私だけ。暗闇の中、たった一人でおそるおそるの風呂通いとなった。

日没後の川がお風呂代わり

 初日の夜のこと。おっかなびっくり川までたどり着いたとたん、その恐怖は消え失せた。頭上には、これまで見たことのない星空が広がっていたのだ。人の気配もないから、満天の星を独り占め状態。川の水も冷たすぎずちょうどいい。たまらず、川の中にじゃぶじゃぶと入ってゆき、存分に星空の下のシャワーを楽しんだ。ひとっ風呂浴びてご機嫌でベースキャンプに戻った後に知ったのだが、この川には4m級の巨大ワニが生息しているのだという。ボートの上で水浴びをするのは、ワニを避けるための対策であったらしい。風呂上りの私は、現地のネイチャーガイドにこっぴどく叱られた。

4m級のワニも棲むキナバタンガン川。川面に赤いものが光っていたら、それはワニの目、なのだとか

 翌朝、まだ霧がかかるキナバタンガン川をリバークルーズしている最中に見たのは、オランウータンやテングザル、カニクイザル、優雅に空を飛ぶつがいのサイチョウや、美しいキングフィッシャーなど。そう簡単には慎重なオランウータンを見ることはできないが、私たちは間近で見られたのだからラッキーだ。オランウータンはマレーシア語で森の人(オラン=人、ウータン=森)を意味する。その名のとおり、彼らは賢く繊細で、人間にとても近い動物だ。ちなみに、キナバタン川沿いに暮らす人たちはオランスンガイ(スンガイ=河。つまり河の民)と呼ばれている。私たちは、オランスンガイの素晴らしいガイドのおかげで、いろいろな動物に出会うことができた。

朝夕はリバークルーズで船上から動物を探し、日中はネイチャーガイドとともに深い森を歩く

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2014.01.28(火)
text & photographs:Kazumi Serizawa