M-1やキングオブコントなど賞レースのチャンピオンも出演するお笑いライブの制作会社の代表が、どんな仕事にも役立つ仕事のコツを大公開する『笑って稼ぐ仕事術 お笑いライブ制作K-PROの流儀』(文藝春秋)。同書から「クレーム対応」のコツを抜粋し、転載します。(全4回の4回目/初めから読む)
意地悪で攻撃的なクレームに打ち勝つ方法、教えます!
以前、ウエストランドの井口くんが、DMで長文のクレームが来て腹が立ったということを、ライブのオープニングトークや、自身のYouTubeチャンネルなど至るところで発表していました。
DMの内容は、楽屋で他の芸人さんたちに愚痴を言っているのを横で聞かせてもらって知りましたが、本当に言っていることがめちゃくちゃで、気にする必要はないし、「無視して終わり」のようなものでした。
でも、井口くんは真正面からそのクレームにぶつかっていって、怒りを全員にぶつけて笑いに変えていたんです。井口くんは昔から、怒りをそのまま溜め込まずに吐き出して、それをやる気と芸に変えて発散して、それでM-1チャンピオンにまでなったので、本当にすごいなと思います。
こういう仕事をしていると、私のところにも、苦情やクレームの連絡が来ることがあります。もちろん、ちゃんとした問い合わせに関しては誠心誠意向き合いますが、キツい言葉で、明らかにこちら側にダメージを負わせようとしてくる攻撃的なものが送られてくることも多いです。今でこそ酷い意見を見てもなんとも思わなくなりましたが、主催者になりたての頃は、一つのクレームや見なくていい掲示板などを見ては、かなりダメージを負っていた時期がありました。
「お客様に喜んでほしい、楽しんでほしい一心でライブをやっているのに、なんでこんな酷いこと言われるんだ……」と、すごく落ち込んで、それを書いている人の思惑通りの展開にちゃんとなっていましたが、徐々に慣れて、気にしなくなっていきました。それでも少しは嫌な気持ちになったり、腹が立ったりすることもあります。
意地悪なクレームを読んでイライラしたときに一番困るのは、頭が働かなくなることなんです。嫌な気持ちになりたくないというよりは、頭が働かなくなるのが嫌で、そういうキツいことを書いている人のアカウントはミュートしたりして、見ないようにしています(そういうメールを受け止めて、逆に頭の回転を加速させてネタにする井口くんのことを、本当に尊敬します!)。
ちなみに私にダメージを与えたいときは、キツい調子よりも「丁寧に、親身になっている感じ」のほうが、こちらも申し訳なくなりますし、効果的です(笑)。
私はライブの主催以外にも、テレアポやリコールの電話対応のバイト経験もあり、クレームへの対応や攻撃に耐える精神力はそこで鍛えられたと思います。そんな私が、実際に経験して会得した「クレームが来た場合の精神の保ち方」について、紹介していきますね。
2023.12.24(日)
著者=児島気奈