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 M-1やキングオブコントなど賞レースのチャンピオンも出演するお笑いライブの制作会社の代表が、どんな仕事にも役立つ仕事のコツを大公開する『笑って稼ぐ仕事術 お笑いライブ制作K-PROの流儀』(児島気奈/文藝春秋)。同書から「励ますタイミング」についてのコツを抜粋し、転載します。(全4回の3回目初めから読む

タイミングを間違えて「勝手なこと言わないで…」と

 「ナルゲキ」(注:K-PROの劇場)出演メンバーがキングオブコントやM‒1など賞レースのファイナリストになることが増えて、嬉しい限りなのですが、決勝に残れなかった芸人さんにとって、「また来年頑張って!」「この調子なら来年はもっと上に行けるよ!」といった声は、励ましにはならなくて、むしろ「勝手なこと言わないで……」という気持ちになることのほうが多いようです。

 お客様が心から応援したいという気持ちで励ましの声をかけてくれているのはわかるのですが、芸人さんは、本当に精神を切り詰めて、生活を切り詰めて、ネタ作りをしています。

 ライブにかけては直して、相方と険悪な感じになっても、さらに考えて、試して、考えて……。そして「今年はこれで行く!」という、至極のネタを完成させて、大会に挑むんです。

 M‒1は、一回戦から上位3組に入るとネタがウェブ上に載ってしまうので、漫才師たちはそこも計算して、ネタ選びをしています。一つの勝負ネタだけでは足りないので、一回戦用のネタ、三回戦用のネタ、準々決勝・準決勝のネタと、勝負ネタを3、4本作らなくてはいけません。

 賞レースが終わったら、また1年間かけて、新しい勝負ネタを生み出す必要があります。なので、芸人さんからすると、「大丈夫! 来年はいけるよ!」という言葉は、「大丈夫! 爆笑が取れて、審査員にハマる、今までにないシステムの新ネタを3、4本作れるよ!」になるんです。言葉のプレッシャー、エグいですよね。

 こんなことを言うと、「じゃあ応援するなってこと?」と思われるかもしれませんが、それはもちろん違います。

 重要なのはタイミングで、芸人さんがやる気を出し始め、次の賞レースに向けて動き出したときに、「次は絶対に行けるよ!」と言ってあげると、すごく励みの声になると思います。

2023.12.24(日)
著者=児島気奈