『つばさ』(2009年)の、つばさ(多部未華子)の母・加乃子(高畑淳子)は「放蕩息子」ならぬ「放蕩母」。自分の好きに生きて家に寄り付かず、借金まで作ったりして、まるで近年の朝ドラの「困ったお兄ちゃん枠」と「おかしなおじ(伯父/叔父)さん枠」を掛け合わせたようなエキセントリックな母親だ。家事をして家を守る娘のつばさと「母娘逆転現象」が起こっていた。

ヒロインの母が持つ「毒」

「毒母」というワードが頻繁に聞かれるようになった2010年代には、時代を反映して確信犯的にヒロインの母親の造形に「毒」を注入する朝ドラもいくつか登場した。『純と愛』(2012年) の純(夏菜)の母・晴海(森下愛子)は娘に対する依存が激しく過干渉で、かなりはっきりとした「毒母」と言える。終盤には晴海が若年性アルツハイマーを発症し、綺麗事ではない家族のかたちが赤裸々に描かれた。

 社会現象となった『あまちゃん』(2013年)のアキ(能年玲奈/現・のん)の母・春子(小泉今日子)は、自らの母・夏(宮本信子)とのわだかまりをいつまでも引きずる、口の悪い「こじらせ母」。「ヒロイン・アキの母」というよりは、「夏の娘」の印象が強かった。春子が終盤で、母・夏との確執と、アイドルの夢を閉ざされたトラウマを氷解させていく姿は見応えがあった。

「母親(ヒロインにとっての祖母)との確執を引きずるがゆえのこじらせ」という母親像は、『まれ』(2015年)で、まれ(土屋太鳳)の母・藍子(常盤貴子)にも引き継がれた。こちらは春子よりかなり湿度と粘度の高い「こじらせ」で、かなり好みの分かれるキャラクターとなっていた。

 

 現在朝7時15分からBSプレミアムで再放送中の『まんぷく』(2018年)の鈴(松坂慶子)も、いつでも何でも駄々をこねて、娘の福子(安藤サクラ)に過干渉なキャラクターゆえ本放送当時はSNSで「毒母」と叩かれたが、再放送中の現在は観る方にも免疫がついたのか、はたまた松坂慶子のチャーミングな役作りが功を奏しているのか、「ちょっと面倒くさいゆるキャラ」のように愛されているのが興味深い。

2023.12.01(金)
文=佐野華英