7月27日、SNSのトレンドワードに「後藤邑子」が入った。
「友達からいっぱい連絡もらいました。『あんたがトレンドに入ると心臓に悪いからやめて!』って、そんなこと私に言われても……(笑)」
実のところ、ゲーム『この素晴らしき世界に祝福を!ファンタスティックデイズ』と『涼宮ハルヒの憂鬱』のコラボを記念したYouTubeの生配信番組に後藤さんが出演したことがトレンド入りの原因だった。だが、後藤さんの来歴を知る者にとっては、彼女の名前がニュースになると、不安になるだけの理由があった。
『涼宮ハルヒの憂鬱』の朝比奈みくる役や『コードギアス 反逆のルルーシュR2』のアーニャ・アールストレイム役などでアニメ声優として人気絶頂だった2012年、彼女は緊急入院を余儀なくされた。
「もともと中学3年生のときに特発性血小板減少性紫斑病と診断されていました。でも、声優としての仕事が軌道に乗るにつれて病院から足が遠のき、持病の紫斑病と同じ自己免疫疾患の一種である全身性エリテマトーデスを発症していました。
病院に担ぎ込まれたときには、心臓が免疫によって傷害され心嚢液が漏れ出し、心膜のあいだに水が溜まってしまい、臓器を圧迫して心臓がうまく脈打てなくなっていました。さらに肺にも水(胸水)が溜まっていて、寝転がると溺れているように息苦しくなっていました」
無期限の活動休止を発表し、決まっていたすべての役を降板。そのためネット上では「後藤邑子死亡説」がまことしやかに囁かれたこともあった。死亡説は、突然の無期限活動停止発表に対するファンの反応であったが、事実、彼女はこの入院中に、人生で2度目の余命宣告を受けた。
長い入院生活を経て、症状は安定し「寛解」。治療を続けながら、2014年から声優業を再開した。来る11月12日には、音楽フェス「第6回京都アニメーションファン感謝イべント KYOANI MUSIC FESTIVAL ―トキメキのキセキ―」への出演も決まっている。
そして本日9月12日には、幼少期から持病とともに進んだ現在までのキャリアを振り返った著作を刊行した。タイトルは『私は元気です 病める時も健やかなる時も腐る時もイキる時も泣いた時も病める時も。』
トレンドワードの「後藤邑子」に反応した人たちに対し、力強く「私は元気です」と宣言した。
2023.09.17(日)
文=加山 竜司