第169回芥川賞を受賞した『ハンチバック』(文藝春秋)の著者・市川沙央さん(43)は、小説家としてデビューするまで、20年以上にわたってライトノベルの執筆・投稿を続けていた。彼女の創作の原点にあったのは、アニメーション作品からの影響だという。
そんな市川さんが、特に小説を書くための原動力にしてきたのが「相転移」という考え方だった。
「『相転移』という言葉が好きなんです。水を温めるとやがて沸騰して水蒸気になるように、すぐに成果に現れなくてもエネルギーを注ぎ続ければいつかは劇的な変化が訪れる」(2023年5月28日『好書好日』より)
そして、あるアニメーション作品を引き合いに出し、こう続ける。
「そう励ましてくれる『タイムトラベル少女~マリ・ワカと8人の科学者たち~』というアニメの第7話は、挫けそうになった時におすすめです」(同前)
『タイムトラベル少女~マリ・ワカと8人の科学者たち~』(『マリ・ワカ』)は、『地球へ…』『薄桜鬼』シリーズなどで知られるアニメーション監督のヤマサキオサム氏(61)による作品だ。
ヤマサキ氏は、スタッフを通じて前出の市川さんの発言を知り、Twitterでこう投稿した。
〈沙央さんからの直球が届いておじさん泣かされましたよ(笑) 『地球へ…』も見て下さってどうもありがとう。『ハンチバック』楽しみにしています!〉
これに対して市川さんは、
〈ヤマサキ監督に届いてしまった‼︎ どうもありがとうございます……! マリ・ワカも素敵な作品だし、『地球(テラ)へ…』を、、、『地球へ…』をアニメ化してくださってほんとうにありがとうございました……〉
とリプライを返した。
クリエイターとして、お互いを刺激しあい、感謝を述べ合う2人。『ハンチバック』の芥川賞受賞を記念して小誌はヤマサキ氏にメールでインタビューを行った。そこで明かされた、知られざる秘話とは——。
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2023.08.21(月)
文=「週刊文春」編集部