フリーランスになってからの変化
――フリーランスになってみて、変化したと思うことはありますか?
林 フリーになった直後には、 パリコレのようにある情報が集積する場所やタイミングに合わせて自分も足を運んで、そこから発信するという報道のかたちを続けるのかな? と思ってはいたんですが、2000年前後にファッションショーのウェブ配信が始まったことを受けて、ファッション界や報道のあり方も変貌をとげていきました。私自身も家族のケアをする必要なども出てきて、自分は主に東京にいながら、継続して取材をしたいと思う人たちと、その時々のやり方でコンタクトを取ったり企画に落とし込んだりして、長年の関係を築いてきました。
『here and there』は特に、「対話」からつくられるもので、「ともに」の場所なんです。キュレーターが「こういう展覧会をつくります」とか、編集長が「今号ではこの人たちとこんな特集をやります」というように、ある立場にいる人物が受け手より高い位置から方針を決めて情報を発信する、という方法とは違うやり方でつくってきました。
「この人は無力に違いない」という社会の見方は変わっていく
――〈どこに誰といて、何をするか。日々の選択や行動は、批評行為だと私は考えています〉という文章からはじまる最新号の『here and there』vol.15には、20年、30年と交流を続けてゆるやかにつながってきたエレン・フライスやスーザン・チャンチオロ、マーク・ボスウィックといった顔ぶれとともに、デザイナーの尾中俊介さんをはじめ、新しく参加した人も多くいます。林さんが今後やっていきたいことを教えてください。
林 すべての行為が批評だと思っています。資生堂の『花椿』にいながら、『Baby Generation』展を企画する。フリーランスになって、雑誌『here and there』をつくる。その行為自体も批評だと思うんですね。ただ、そういう風に読み解かれることはなかなかない気がします。雑誌のインタビューの場などでは「結局、ガーリーカルチャーというのは90年代に消費された文化ですよね」と言われることもあり、文化の本質が伝わっていないな、とがっかりすることもあります。
2023.05.01(月)
文=「文春オンライン」編集部