いざ“ルネッサンス式白亜の大劇場”の中へ!
重たい扉が力強く開けられ、客席へと入ると真っ赤なイスが整然と並んでいた。2階席まで吹き抜けの高い天井が開放的で、思わず見上げたくなる。
舞台にあがると客席が一望、2階席までよく見える。芝居小屋だった当時1階は板敷きの床に、中央が大きい枡席で左右が一段高い枡席だったらしい。現在の1階は、昭和10年ごろにイス席に改装され、そのあと昭和の中頃に付け直したものを、2009年の修繕のとき貼りなおしたもの。随分新しくてキレイに見えるが年代もののようだ。
限られた時間内にすべてを見尽くしたい緊張と、古いものが今でも大切に残されているという興奮で、カメラを持つ手が震える。
注目したいのは、木組みの天井の中央にある意匠。昔はこの中央からシャンデリアがぶらさがっていたようだ。どのようなものだったのだろうか。想像するだけでワクワクする。
さらに意匠の中心の模様は、江戸時代に高田藩を治めていた最後の殿様、榊原家の家紋。建築の際に榊原家の関係者がどこかで関わっていたのでは? とのことだが、このようなシンボル的な場所に家紋を残すとは、一体どんな関係だったのだろうか。
柱や階段、2階席などよく見ると、あらゆるところがカーブを描いており、宮殿のようなエレガントな雰囲気である。当時の新聞には「ルネッサンス式白亜の大劇場」と書かれていたそうで、洋風のデザインは当時、相当前衛的だったのだろう。かつての娯楽の場には、今見ても随所に夢が見て取れる。そういうところに私は心惹かれるのだ。
2階席は昔、特別席で料金が高く設定されていた。2階席のイスは大正時代のものと古く、鋳物でできた本体に合板の背板を取り付け、クッション部には藁が詰められていた。大正時代のものを貼り直して使われているイスは、昔の日本人サイズに合わせているため、現代の人には窮屈な作り。それがまた時代を感じさせられ、すごくいい。カーブを描く2階席には様々なタイプのイスが並び、さながらおしゃれなカフェのような雰囲気である。
2023.04.22(土)
文=あさみん