『うちの猫がまた変なことしてる。』など猫マンガでおなじみの、卵山玉子さん。
最新作『ねこの手キッチン』は、なんとしゃべる猫と一緒にごはんを作る、今までにない料理マンガ。しかも卵山さんがストーリーマンガを描くのは本作が初めてだそうで、季節感溢れるレシピとともに、こだわりの詰まった一冊になっています。
そもそもの設定やレシピの選び方、ストーリー展開に込めた思いなどを語っていただきました。
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自分のズボラな面を、主人公に反映させています
――これまでさまざまな猫マンガを描かれていますが、今回、どのようにして猫と料理という組み合わせが生まれたのですか?
きっかけは、担当編集の白川さんに「料理に興味ないですか?」とお声がけいただいたことです。ストーリーマンガを描くのも今回が初めてだったのですが、新しいことにチャレンジするいい機会かなと思いました。
――設定やキャラクターはどうやって考えていったのでしょう。
最初に決めたのは主人公モモの28歳っていう年齢と、働いていて忙しい人であることと、ズボラなことくらいです。ズボラな面って、みなさん何かしら持っていたりしますよね。自分もそういうところがたくさんあるので、モモに反映させています。
ネコ助に関してモデルなどは特になく、一からキャラクターを作りました。モフモフにしたのは、かわいかったからっていうのと(笑)、今までモフモフ猫を主人公として描いたことがなかったからっていうのもありますね。長毛の猫って描いてみると、結構遊べるなと思いました。
――一人暮らしの女性の部屋に、しゃべる猫がある日突然やってくるという設定に込めた思いは?
とりあえずしゃべらないと話的に無理なので、そこは決定事項でしたね(笑)。最初はネコ助を妖怪とか妖精にするという設定も考えてみたんですけど、細かいことは置いておこうってことになりました(笑)。
それと猫を飼ったことのない人という設定にしたかったんです。一緒に料理をしながら、交流を深めて仲良く暮らしていく流れを見せていきたいっていうイメージはありましたね。
――レシピマンガといってもいろんなレベル、方向性があると思うのですが、モモのズボラなキャラクターは、料理に不慣れな人も入りやすいですよね。
ゼロからでも大丈夫だし、楽しめることを伝えたいと思いました。イメージしたのは、いわゆるオーブンレンジではなく、温め機能だけの電子レンジを持っていて、調味料も基本的なものしかないという人。調理器具は話が進むにつれて、少しずつ買い足していくくらいがいいかなと思いました。
登場するレシピは簡単なのにおいしそうなものばかり
――ちなみに卵山さん自身は、料理はお好きですか?
結婚してからなんとなくやってきたのですが、実はそれほど好きではないってことに最近気づいちゃいました。できればやりたくないものではあるんですけど、その辺の面倒くさいと思う気持ちを、割とモモにぶつけていますね。
――その点、登場するレシピは、簡単なのにおいしそうなものばかりですが、どのように考えたのでしょう。
まず春夏秋冬で旬の食材を調べて、食べてみたいレシピを考え、それを監修の田中裕子先生にアレンジしていただきました。
そのときに意識したのは、一緒にうどんを踏んだり、グリーンピースのさやを剥いたり、アイスを揉んだり、お芋を掘ったりなど、料理中や料理をするまでの工程も含めてイベントっぽくなるものというか、思い出に残るようなレシピを取り入れていること。
その後、田中先生に目の前で作ってもらって、試食会をしたんですけど、料理中の発言やアドバイスは、ネコ助のセリフとしても使わせてもらっています。的確で印象的なことを言ってくださったので。
――モモがお酒好きということもあり、ササッと作れておつまみになるようなレシピが多い印象ですが、防災ごはんのようなおいしいだけではないレシピも入っています。
季節で章分けをしたとき、9月に防災の日があるなと思ったんです。災害はいつ起こるかわからないので、読んでいただいたことがなんとなく記憶に残り、いざというときに役立てばといいなと思って入れてみました。
2023.04.03(月)
文=兵藤育子