映像作品を通して見えたもの
――2022年は映像作品でも活躍されていましたが、ご自身にとってどういう1年でしたか?
普段お会いできない俳優の方たちと共演できたのが、ものすごく嬉しかったです。とはいえ映像は稽古期間がないのと1人の作業が多いので、稽古慣れしている僕としては、やっぱり人とキャッチボールをする舞台のほうが楽しいですね。
でも、映像の現場ではいろんな方がお芝居に挑まれる姿勢やそうした方々のプロフェッショナルな部分を見ることができたのは、とても良い経験になりました。そして、映像は“瞬発性”を求められるので、それは僕自身も演ってみて、新鮮で楽しかったです。
――最近携わった映像作品で一番印象に残っている作品はありますか?
“一番”というのは、特にないですね。2022年に放送された作品の中には1年以上前に収録したものもあるのですが、放送が重なっていただけということもありました。皆さんからは忙しいと思われて「大変だね」と声をかけられることもありましたが、実際は撮影が全部終わって時間があるときもありました(笑)。
――2023年は、『蜘蛛巣城』の後も、劇団朱雀の公演が控えています。こういう年にしたいという抱負はありますか?
2023年は“舞台を演る”と決めていたので、今年の舞台に繋げたいという思いから、自分の名前や顔を知っていただくために映像作品に出演させていただいたという意図もありました。ですから、実際にドラマを見ていただいたことで、入口を増やすことができたので、達成できたのかなと思います。
劇団朱雀の公演は三部の構成で、女形の舞踊ショー、芝居、全員での舞踊ショーと何でも演るという感じなのですが、演し物もそうですが、お祭りを作るような感覚に近いので、お客さまにもお祭りを楽しんでいただく気分でご覧いただきたいです。自分のルーツである大衆演劇というものの良さと、ただそれを演るだけではなく、ブラッシュアップして変化させていくことにもチャレンジできたらいいなと思っています。
早乙女太一さんが心と体を整える方法とは?
――自分の時間ができたときは何をしますか?
サウナに行くことです。元々、お風呂もサウナも嫌いだったんですが、ここ2年くらいで一気にハマってしまいました。友だちに連れて行ってもらったのがきっかけで、今は時間があるときに電車に乗って、行ったことのない場所の駅で降りて、その土地の美味しいお店を探して、ご飯を食べてサウナに入るというのが一つのセットになっています。
サウナはいろんな利点がありますよ。頭をリセットさせたい時もすごくいいですし、常に考えてしまうのをストップさせることができます。ストップすればリラックスできますし、体温が上がれば免疫力が上がって、むくみも取れます。
僕は心を元気にしたいタイプなので、サウナに行くことで自分が楽しいことをした方が心も体に伴うし、体も心に伴うのがいいなと。自分が楽しめて、リラックスできることに自分の時間を使うようにしています。
――最後に、2022年に経験したことを通して実感したことを教えてください。
考える時間が増えて、“自分と向き合う”ようになりました。自分を取り巻く環境で育まれる価値観があると思っていて、自分がやりたいと思っていることが、本当に舞台なのか、あるいは映像作品なのか、自問自答をしました。
これから自分がやるべきこと、やりたいことって何だろうかと、自分を見つめる時間が増えたことで気がついたのは、どんな表現であっても人と一緒に何かを作ることが好きなんだということ。
自分が舞台に立つことで、いろんな表現者の方たちと会話ができて、繋がることができるのは大きな職業だなと思いました。同じ場所で共有して、それを体感できるのは特別なことだと思うので、色んな形態の娯楽がありますが、その場所に足を運ぶことの大事さや楽しさを感じた1年でした。2023年もそれが楽しみです。
早乙女太一
1991年、福岡県出身、大衆演劇 劇団朱雀の二代目として4才で初舞台を踏み、数々の舞台に出演。2003年に北野武監督の映画『座頭市』に出演したことで、“100年に1人の天才女形”として広く知られる。15年に劇団解散以後は舞台やドラマ、映画などに活動の場を広げる。19年に二代目座長として大衆演劇「劇団朱雀復活公演」では総合プロデュース、脚本、振付、演出を手がけた。
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『蜘蛛巣城』
公演期間 2023年2月25日(土)~3月12日(日)
場所 KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉
https://www.kaat.jp/d/kumonosujo/
2023.02.23(木)
文=山下シオン
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=奥山信次(B・SUN)
スタイリスト=八尾崇文