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不妊の原因の半分は男性にあることを知らない男性たち

おかざき 医療監修をお願いするにあたっては、石川先生が生殖医療専門医として男性不妊治療の最前線にいらっしゃるという点も、大きかったんです。

 男性読者メインの青年誌で描かせていただくうえで、何が伝えられるか。妊娠や出産をされた女性から話を聞くと、やっぱり妊娠したスタート時点からの心構えが女性と男性とでは違うというのをよく聞くんですね。

 不妊治療をしていなくても、男性には妊娠を自分事として併走してもらいたいし、ましてや不妊治療中ともなれば精神的にしんどいことも多いので、なおさらです。その点について男性にもっと知ってもらいたかったし、漫画では男性不妊についても濃いめに描いていて、不妊のほぼ半分は男性側に原因があることも、きっちり示しました。

 そうそう、知り合いにアラサーの男性税理士さんがいて、彼に「不妊の原因はなんだと思います?」と聞いたら、一言、「女性の年齢でしょう」と言われて。「いや、ほぼ半分は男性に原因があるんですよ」と伝えたら、その方、本当にびっくりしていたんです。

石川 まさにご指摘の通りで、日本では不妊の原因は女性だけにあるとずっと思われていて、不妊治療もウィメンズクリニックとか、レディースクリニックといった名の施設でしか行っていませんでした。しかも裏通りにあって、女性がこそこそ隠れて通院しているような状況でしたよね。

 それに世間では結婚したら子どもを持つのが当たり前と思われていて、その当たり前のことができないというもどかしさだったり、義実家からのプレッシャーを受けたりと、女性は多大なストレスを抱えながら治療を受けている。にもかかわらず、これまで男性は治療に一緒に行くことすらしませんでした。

 僕はそこを変えたかったんです。ストレスをサポートに変えていこうというのが、我々スタッフの存在意義の一つと考え開院しました。でもいざ開院してみると、当院を選んで受診されるご夫婦は二人揃っていらっしゃることが多くて。

 不妊で悩む女性が抱える苦悩とか、不妊症の原因は男性側にもあるという事実について、男性は今まで知らなかっただけなんですよね。知りさえすれば、理解を示す男性って実はとても多いんです。そして二人揃って来院されるご夫婦は、たいていとても仲が良くて。

 僕のほうからも、患者さんの帰り際、「帰りに二人で食事をして帰ってくださいね。ショッピングにでも行ってくださいね」とよくお伝えするのですが、一緒に家族を形成する過程において、治療が明るいスタートラインになればと願っています。

2023.01.30(月)
文=内田朋子