セニング最大のデメリット
さらに、美容師が気にするセニングのデメリットとして、「セニングを使うことによって髪が膨らむ」があげられます。膨らむ髪を減らそうとしてセニングを入れると、もっと膨らんでしまうのです。
「毛量を減らすのに膨らむって、どういうこと?」と思うかもしれませんが、これには理由があります。
まず、髪が膨らむことに悩む方の多くは、ウェーブ毛であることがほとんどです。これは、髪はウェーブの重なりによって厚みが出て膨らむからです。
また、先述の通り、髪は短い方がウェーブの影響を受けやすくなります。長いほど毛先が“重り”のように髪を引っ張るので、ウェーブが伸び、ボリュームも小さく収まります。
美容師にとっては、膨らむ髪質の人ほど、安易にセニングで“すく”ことができません。当たり前ですが、髪の毛は重力によって上から下に落ちています。図はセニングで切った断面を縦にして、下に落ちている状態を表しています。
セニングをすると、髪の切り口が「長い、短い、長い、短い」の状態になるので、「短い部分」の上に長い毛が乗っかり、また「短い部分」の上に長い毛が乗っかり……という形になります。これがウェーブ毛の場合、「短い部分」はウェーブが出やすく長い時よりも膨らみます。すると、それがクッションのようになってしまう。
つまり毛量を減らしたつもりの「短い部分」が、ヘアスタイルを膨らませるクッションを作ってしまうのです。
「すくと膨らむ」は美容師にとっては“あるある”
先述した「セニングで膨らむ」現象は美容師にとっては“あるある”で、施術をする上で「絶対に避けたい状況」の一つに数えられます。
特に、膨らみやすい髪質の方に対してのボーダーラインはシビアです。経験のある美容師さんであれば、「この髪質は過度にセニングをしてはいけない」と判断できますが、経験が浅いとボーダーを超えてしまうこともあります。この現象を避けるために、そもそもセニングは使わない美容師も多くいるほど、賛否両論のツールなのです。
2022.12.23(金)
文=操作イトウ