しかし、ゴールが近いからこそ慎重になる必要がある。今年に入って生じたオミクロン株による第6・7波は、小児を起点に感染爆発を起こし2万人以上の死者を出してしまった。そして、その中には40人以上の子供が含まれている。

 

 大人は十分にワクチン接種の機会を提供されたが、子供に対しては機会も情報提供も不十分だ。この文章を書いている10月15日現在、4歳以下の子供のワクチン接種ははじまってすらいない。

 子供は社会で最優先に守られるべき存在のはずだ。子供を犠牲にしての社会の正常化は、決して赦されない。

全ての医薬品にはリスクが存在するが…

 たしかにワクチンをはじめとする全ての医薬品にはリスクが存在する。しかし、伝播性が極めて高く、子供でも重症化し得るウイルスと共存しはじめている現状、『すべての年代においてワクチン接種によるベネフィット(利益)は、リスクを遥かに上回っている』ということは間違いなく、行政、そして医療関係者はその事実をしっかりとくり返し発信していく必要がある。

 このコロナ禍で日本国民は極めて理知的に行動し、悪質なウイルスに立ち向かった。これから、感染症が蔓延しやすい厳しい冬がやって来る。気を抜けば、第7波を越える第8波が列島を呑み込むだろう。

 しかし、日本国民は『オミクロン対応ワクチンの接種率上昇』『小児の接種率上昇』『感染対策の徹底』という必要な対応をこれまでと同様に着実に行い、この冬を少ない被害で乗り越えられると信じている。

 今回刊行する『機械仕掛けの太陽』が、最小限の犠牲でコロナ禍を乗り越えるための一助になることを願ってやまない。

2022.10.27(木)
文=知念実希人