「その不器用さは、ほとんど“狂気”ですよね」
三谷 草彅さん、声、大きいですよ(笑)。おふたりはいい意味で印象が変わらないです。7年前どころか、初めてお会いしたときから全く。今日の稽古でも、草彅さんは初日からセリフを全部入れてくる。一方、香取さんはほぼ入ってない。台本を持ちながらどんどん台詞を自分のものにしていく。その違いが面白いんです。
草彅 僕は不器用な人間だから、基本一つのことしかできない。台本を持ちながら演技なんてとてもじゃないけど無理。ちなみに一番難しいのは司会業。カンペ読みながら進行とか絶対できない。
三谷 その不器用さは、ほとんど“狂気”ですよね。例えば「明日の稽古は20ページからやるので、台詞を覚えてきて下さい」と僕が言うと、普通の役者さんは当然20ページから覚え始めます。でも草彅さんは1ページ目から遡って覚え直すんです。
草彅 はい。
三谷 で、結局力尽きて、肝心の20ページまで辿り着かないことがある(笑)。そんな人いないです。
草彅 そうなんですか。
三谷 一方の香取さんは、僕から見ると、とても常識人。いつも冷静だし、演出もするからかな、すごく客観的な目を持っている。
香取 狂気というならば、僕はこの狂気の世界で10歳から育ってきたので、そこに対応するには冷静な気持ちを持っていないと生きてこれなかったのかもしれないですね。
「僕は『あと何年』ということは若い頃からずっと考えてますね」
三谷 初演から7年が過ぎました。僕は60代、おふたりは40代後半に入りました。健康に気を付けるようになったりはしましたか?
香取 人間ドックに行ってます。
草彅 同じところに行くんです。
香取 歯医者も同じところ。
三谷 人生の残り時間とか考えます?
草彅 この前、泉谷しげるさんとご一緒した時に、「俺は自分がどこまで疲れられるか試すんだ」と仰っていて、ああロックンロールだ、いいなあと思いました。
香取 僕は「あと何年」ということは若い頃からずっと考えてますね。以前はコンサートツアーを2年に1度とかやっていたんですが、僕は演出を担当していたので、「2年に1度と計算していくと、年齢を考えるとあと10回やれる? 20回?」って。ソロになってからは、あとアルバムを何枚出せるだろうかと考えるし。
2022.10.08(土)
interview:Ayako Ishizu
photographs:Wataru Sato
hair & make-up: Megumi Tatsumi(Freckles/Mitani), Eisuke Arakawa(Kusanagi), Tatsuya Ishizaki(Katori)
styling: Kan Nakagawara(CaNN/Mitani), Kayo Hosomi(Kusanagi, Katori)