サウナでととのい、感覚が研ぎ澄まされたあとの晩酌は、何物にも代えがたい魔力を秘めている。日本中のサウナと酒場に行き倒してきた筆者が“ととのい気分で極上サ飯を巡礼”する企画、それが日本サ飯紀行である。

◆◆◆

知られざるサウナタウン大塚

 大塚。都電荒川線と山手線が乗り入れ、文京区、豊島区、北区と隣接し文化が交錯するカオスな街。北口側には角海老ボクシングジムをランドマークとする雑多な飲み屋が、南口には天祖神社を中心に多国籍な飲食店が立ち並ぶ。

 昔の大塚を知っている方なら別の町と思えるほど再開発で綺麗になった駅南口を出て、サンモール大塚商店街を天祖神社の方に登っていく。昔ながらの店が立ち並ぶ、入り組んだ細い路地を抜けると、黄色と赤の派手なデニーズカラーに彩られた看板とレトロなロゴが飛び込んでくる。

 サウナニュー大塚。1階は大塚記念湯という、脱衣場の天井には宇宙のイラストが施されている、ポップでキッチュな正統派銭湯だ。銭湯の入口でサウナ利用を告げる。入場料1000円と館内着に大小タオルが入ったバッグを受け取り、内階段で2階へ。

 そこには昭和の香りのする心安まる休憩スペースが広がっている。いつ来ても香ばしい。その先が脱衣場。ロッカーの外側にはフックがついており、バッグをそこにひっかけることが出来る。

 細やかな気遣いに感謝し昭和にワープした気持ちで、ゆっくりと浴室に入る。中は非常にクラッシックでバイブラ湯と電気湯と水風呂がそれぞれというシンプルな造り。

 お目当てのサウナ室はガスストーブがセンターに鎮座し、100度を超える強烈な熱さで客を蒸し続けている。当然セッティングはカラカラの昭和ストロングスタイル。サ室を出るとすぐ横に水風呂。この日は水温17度。冷たすぎず、適度な温度を保っており気持ちが良い。

 

 浴室の奥には小さな扉があり、そこから外に出れば、そこは『時間ですよ』に出てきたような物干し場。往年の堺正章が出てきて「街の灯り」でも歌い出しそうな雰囲気だ。

2022.08.20(土)
文=五箇 公貴