寝ても覚めても暗いニュースばかりでうんざりである。そこに容赦なくやってくる梅雨&猛暑。ああもうジメジメするし髪は爆発するし暑いし、ムカつくムカつく、ストレスストレス! 長い自粛生活でコミュニケーション能力はガタ落ちしているから、こんなときにチクリと面倒なことを言われたら、憤りが暴発しヘンな怒り方になってしまう!
怒りの言葉を上手に選んだり、気持ちを収めたりするのは本当に難しい。そんなとき、Adoの『うっせぇわ』のサビを心で歌うと、フッと収まると聞いた。試しに歌ってみる。
「うっせぇうっせぇうっせぇわ あなたが思うより健康です」
なるほど。確かに……!
「日常のイライラ」に効く名曲たち
『うっせぇわ』がリリースされたのは、コロナ禍のど真ん中、2020年である。攻撃的な言葉の巧みなパズル! 懐かしい価値観(「空いたグラスがあれば直ぐ注ぎなさい」など)が描かれちょっと意外だっだが、重要なのは太い歌声とキャッチーなサビ。「ほっといて」でもなく「うるさい」でもなく、思わず口から出ちゃった的な、投げつけるように歌われる「うっせぇわ」! これが閉塞感に苦しむ時期にバシッとハマった。
この曲と2020年のドラマ『半沢直樹』の大げさなほどの台詞バトルは、多くの人が抱いていた鬱憤や怒りを代弁し、その発散に大いに役立ったと思う。まさにアンガーマネージメント・エンタメ!
2022年にはアイドルグループBEYOOOOONDSが『ハムカツ黙示録』という、そのものずばり「アンガーマネージメント」をテーマにした楽曲を発表。こちらは『うっせぇわ』よりもっと日常的な「はあムカつく(ハムカツ)」。「ああ、わかるわー」と共感し、クスッと笑うことができた。
ありがたい。今なお続くこのイライラモヤモヤを軽減できる歌はもっとないものか。そもそも歌を「口ずさむ」の「ずさむ」は、古くは「荒む」とも綴り、「荒ぶる」という意味があったそうだ。ならば歌の力を借りて荒ぶってスッキリしよう!
2022.07.03(日)
文=田中 稲