〈あらすじ〉

米国在住の比較文学教授のレダ(オリヴィア・コールマン)は、執筆活動とバカンスを兼ねて、ギリシャの島を1人で訪れる。ビーチで過ごしていると、近所の別荘に滞在中の少女エレーナがいなくなり、若い母親ニーナ(ダコタ・ジョンソン)を中心に大騒動となる。エレーナを見つけ出したレダは、少女が大事にしていた人形を、衝動的に盗んでしまう。ニーナとエレーナ母娘を見ているうちに、レダは自身の20年前の記憶に苛まれるようになる。20代のレダ(ジェシー・バックリー)は気鋭の学者だったが、若くして2人の娘を授かったため、子育てと研究の両立に苦しんでいたのだ。

〈解説〉

Netflixオリジナル映画。女優マギー・ギレンホールが自身の脚本で長編監督デビュー。若い女性が母親になることへの不安や恐怖を描く心理ドラマ。第94回アカデミー賞で主演女優賞、助演女優賞、脚色賞の3部門ノミネート。122分。

  • 中野翠(コラムニスト)

    ★★★★★全編に漂う不穏な空気。少女と人形。母性という謎。O・コールマンの演技、初めて納得。M・ギレンホール、初監督とは!

  • 芝山幹郎(翻訳家)

    ★★★★☆もたれるし、神経をざわつかせる話だが、親切と残酷が席を替える独特の感覚がよく出ている。村上春樹の住んでいた島か。

  • 斎藤綾子(作家)

    ★★★★☆仕事で活躍する事と美貌を失わず子育てする事がどれだけ捻じれる現実か。その歪みを崩れた人形で表すとは恐ろしや。

  • 森直人(映画評論家)

    ★★★★☆自己実現と子育て。両者に引き裂かれた女性の悔恨を通し、現代社会のプレッシャーが烈しく焼付けられた。堂々の秀作。

  • 洞口依子(女優)

    ★★★★★初監督にして人の内省の襞を擬えるこの表現力。イエイツの詩からの引用、謎、コールマンの怪演然り、脚本もいいはず。

『ロスト・ドーター』(米)
https://www.netflix.com/jp/title/81478910

2022.03.28(月)
文=「週刊文春」編集部