好奇心の衝動にまかせ まずは行動する!

 松下さんの表現の入り口は絵を描くことだった。画家の母の影響で高校は美術科に進学し、美術の道に進む予定だったが、18歳のときに『天使にラブ・ソングを2』を観て衝撃を受け、こんなふうに歌えたらどんなに楽しいだろうと、美術から音楽へ大きく舵を切る。

「やってみたい! 楽しそう! と思ったらまず、行動する。考えるのはそのあと(笑)。子どものころから好奇心旺盛で、一つのことにこだわらずに面白いと思ったことはとりあえずやってみるタイプでした」

 音楽の専門学校を卒業後、21歳で「洸平」名義でペインティング・シンガーソングライターとしてデビュー。なかなか結果を出せず悶々としているときにミュージカルの舞台に誘われ、その出演を機に舞台の魅力に目覚めた。その後、栗山民也ら名演出家と出会い、2019年には「スリル・ミー」「母と暮せば」で読売演劇大賞優秀男優賞と杉村春子賞などを受賞。同年、「スカーレット」のヒロインの相手役に抜擢された。

 松下さんは、音楽を志すと決めたときには武道館のステージに立つ姿を、俳優をやろうと決意したときには朝ドラや月9ドラマに出演するビジョンが頭に思い浮かんだのだそうだ。

「こうなりたいという自分がある、というのは恵まれているなと思います。その夢が叶うかどうかは別として、無計画に夢を見ることができる性格でよかったなと(笑)」

 松下さんは決して飾らない。壮大な夢についても、「そんなことを口にしたら笑われてしまうんじゃないか」なんて意識は1ミリももたなかったそうだ。驚くほど素直、眩しいくらいに無邪気。

2022.04.18(月)
Text=Tomoko Kurose
Photographs=Erina Fujiwara
Styling=Tatsuhiko Marumoto(UNFORM)
Hair & Make-up=KUBOKI(Three PEACE)

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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