我々を出す気にならなかった、例えばテレビや吉本興業も、数字で初めて我々を信用できたんです。テレビや会社が感じている「本当にDr.ハインリッヒを使っていいのかな」という不安を、民衆が取り除いてくれたんですよね。

『M-1』でいうと、YouTubeを見てくれた人の数ですし、今はチケット売上というのが、一番会社に信用される。

 ほんならやらしてあげよう、ってなるんですよ。

 結局やっぱりビジネスですから、数字って強いじゃないですか。我々を勝手に見つけて「おもろいおもろい」って言ってくれる、この民衆というのが、一番の証拠品で。とても偉い人のおめがねにかなったり、先輩にかわいがられて芸人は売れていくんだろうなと思ったら、その逆やったんですね、我々は。新しい時代だと思います。

 

――お二人がテレビに出始めた頃に比べたら、テレビも絶対的な強者ではなくなった。そうやって少しずつ状況は変わっているんですね。

 今ならYouTubeやラジオで、テレビの悪さを喋られてしまうんですよね。テレビも見張られてるという。もういよいよちゃんとアップデートしな、ダメだと思います。逆にもう断わられっぱなしになるかもしれない。テレビには出られへんって。タレント自身がテレビに出なくても生きていける時代に突入してるので。

黒のスーツにピンヒールは「男装」ではない…衣装の理由

――Dr.ハインリッヒさんは衣装も特徴的で、黒のスーツにピンヒール。アーティストスポークンで「私たちは男装したいわけじゃない」とお話しされていましたが、あの言葉の真意はなんでしょうか。

 なんていうかな、これジェンダー的な話ではなく、「両性的な美」として見られたいんですよ。男的な格好の良さもあるし、女性的なそのしなやかな感じ、美しさもあっていいし。それを2つ持ってる人間は魅力的で面白いんですよ。女性性も男性性もどっちもある人間の面白さを体現していたい。

 面白いことも言いたいですけど、かっこうもつけてたいんですよ。見栄えよくありたい。アルフィーの高見沢さんとかYOSHIKIさんとか宝塚の男役の女優さんとか。人って美しすぎたら面白い。それがかっこいいんですよ。美しいことは面白いんです。

2022.02.04(金)
文=西澤 千央