同分野のスターである前出Night Tempoによると、シティポップを「新しい音楽」だと捉えたロサンゼルスの人々がシティポップをサンプリングしたフューチャーファンクに熱狂したことで、国際人気に火がついたという。

 

日本アニメ人気との関係は

 海外の「フライディ・チャイナタウン」受容で見逃せないのが、日本アニメファン界隈での人気だ。前述した人気リミックスの冒頭に格闘ゲーム風の戦闘開始合図が流れる影響もあり、TikTokやInstagramでは『NARUTO-ナルト-』や『鬼滅の刃』といったアニメのバトルシーン集のBGMにする投稿が目立つ。

 そもそも、英語圏インターネットで「フライディ・チャイナタウン」が大きく注目されたきっかけも、2015年にYouTubeに投稿されたファンメイドのアニメ動画だった。

 フューチャーファンク自体、日本アニメと縁深い分野だ。アートワークには80~90年代アニメの女性キャラが使用されることが多い(その多くが無断使用だが)。なかでもセーラームーンと『うる星やつら』のラムは、ジャンルのシンボルになっている。

 70~90年代日本のシティポップやアニメのエッセンスを纏うフューチャーファンクの鍵は、レトロでノスタルジックな感覚だ。その郷愁は、ときに「フェイク」だと批判される。

 同時に、源流ジャンル「ヴェイパーウェイヴ」の開拓者である1992年アメリカ出身アーティストVektroidが「私のアートは主に幼少期の思い出から生まれた」と明かしたことも重要だ。フューチャーファンクにしても、子ども時代からの日本文化愛を創作に活かすアーティストが散見される。

 1991年メキシコ生まれのマクロス MACROSS 82-99は、幼いころ父親に見せられたアニメ映画『AKIRA』といった日本文化の衝撃がインスピレーションだと語っている。1986年韓国生まれのNight Tempoも、父親が輸入業を営んでいたことから、小学生時代に中山美穂の曲に出会ったという。その後、二人ともインターネットを通してより多くのコンテンツに触れていったようだ。

2022.01.28(金)
文=辰巳JUNK