今、渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで、展覧会「ザ・フィンランドデザイン展ー自然が宿るライフスタイル」が開催中です。期間は2022年1月30日(日)まで。

 ヘルシンキ市立美術館(HAM)監修のもと、1930年から70年代にフィンランドでデザイン・制作されたテキスタイルとガラス工芸作品を中心に、陶磁器や家具類、同時代の絵画や写真資料が会場に並びます。

 その数は作品が約250点、関係資料は約80点。これらはフィンランド中の博物館や個人コレクターから集められたもので、本国でも通常は見られないまさかのラインナップです!

 すでにフィンランドのデザインに精通する人は、あらためてその素晴らしさを実感でき、初めて触れる人はその全容を知り、深めることができる絶好の機会となっています。

あのフラワーベースは、湖がモチーフだった!?

 フィンランド製品の特徴は、芸術的なものも実用的なものも、そのほとんどが自然をインスピレーションにしてデザインされていること。

「この作品にはどんな自然の要素が取り入れられているのか? 探しながら展示を観ていただけると楽しいと思います」

 そう話すのは、Bunkamura ザ・ミュージアム学芸員の菅沼万里絵さん。

 例えば、アルヴァ・アアルトを代表するデザインとしてあまりにも有名な花瓶「サヴォイ」。実は民族衣装のひだがモチーフになっていますが、フィンランドの湖やオーロラをも想起させます。

挽き曲げ技法で、有機的なデザインに

 1930年代のフィンランドの家具デザインの特徴のひとつが、アルヴァ・アアルトによって開発された挽き曲げ技法です。

 この技術革新によって木材を曲げることが可能になり、有機的な形の家具を生み出せるようになりました。

実用性が高く、どんな家庭にもフィット

 スープ皿に代表されるように用途が決められたヨーロッパの伝統的な食器に対して、カイ・フランクのデザインは、なにを食べても飲んでもOKな、自由に使える実用性の高さが特徴です。

 おまけに家が広くなくてもスタッキングして収納できる機能性も兼ね備えています。

「手になじみやすく、使いやすく、どんな家庭にもフィットするのがフィンランドデザインの特徴のひとつですね」(菅沼さん)

特徴的な意匠はガラス製品も同様

 大量生産された実用性の高いガラス製品は、デザインも美しいものばかり。

 展覧会の会場には、現在も変わらずフィンランドの食卓を彩る、当時作られた代表的な製品が並びます。

「家庭用のガラス製品にも自然の要素を取り入れた有機的な曲線が見られますね」(菅沼さん)

 また、ナニー・スティルのようにガラス製品に幾何学的なフォルムを取り入れたデザイナーも登場しました。

2021.12.21(火)
文・写真=石川博也