しかも時はコロナ禍の真っ盛り。毎週その話で始まるという特異な時代の中で、桑田佳祐はある意味で幸運にも書くことに時間をさき、ファンとしてはありがたいことに過去の音楽歴を細かくたどり直し、同時に現代の無観客ライブをいち早く敢行していく様子をレポートした。
逆にもしも、ミュージシャンとしてパフォーマンスありきの部分を封じられ、ただ室内で楽曲作りを要請されただけであったら、あれだけ揺れてしまう人は苦しかったのではないか。
2020年1月から約1年半にわたって、週刊誌で連載していた桑田佳祐のすさまじい強運。その運を音楽との出会い直しに注いだ姿を我々は見習うべきだろう。
くわたけいすけ/1956年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。1978年にサザンオールスターズ「勝手にシンドバッド」でデビュー。以来、バンドのフロントマンとして、またソロアーティストとして、つねに日本のミュージックシーンのトップを走り続けている。
いとうせいこう/1961年、東京都生まれ。作家、クリエイターとして、活字/映像/舞台/音楽など、多方面で活躍。近著に『福島モノローグ』。
2021.12.15(水)
文=いとうせいこう