#236 Kushimoto
(串本/和歌山県)

 紀伊半島の南端、台風中継でたびたび耳にする“潮岬(しおのみさき)”がある串本。

 かつて潮岬は島でした。潮流によって運ばれた砂が堆積し、砂州を形成。潮岬半島と紀伊半島がつながり、平たい台地状のところに、串本の市街地のほとんどが乗っかっています。

 串本は、砂州上で生活する人口の多さが函館に次いで2番目で、日本三大トンボロ地形のひとつになっています。

 本州最南端に位置する串本。沖には黒潮が流れていることで、世界的にも珍しいユニークな自然が育まれています。

 湿地帯を保護するための国際条約、通称「ラムサール条約」に2005年に登録されています。“湿地帯”というと、沼や湿原のイメージですが、この条約においては水田やため池、干潟、そして水深6メートル以浅の海も含まれています。

 串本の海が選ばれた理由は、水面下に温帯と亜熱帯が混ざり合った景観が広がっているから。

 串本は北緯33度30分。本来なら、海藻が茂る温帯の海です。それが、沖に流れる黒潮が南方から温かい水をもたらし、亜熱帯のようなテーブルサンゴやエダサンゴなどの群落が形成されているのです。串本のサンゴの群落は、世界でも最北にあたります。

 さらに黒潮は回遊魚や南方に生息する魚たち、子育てのためのクジラの親子を運んできます。

2021.12.04(土)
文・撮影=古関千恵子