朝練後に体育館80往復。部活で鍛えられました
――約9000人のオーディションを突破し、最終候補の10人に選ばれたときの気持ちを覚えていますか。
ありえない!と思いました。オーディションの当日も、場違いすぎるってずっとビクビクしていて。カメラが入っていたんですけど、落ちたときのことを考えてなるべく顔が映らないようにずっと下を向いていたんですね。あのときはもうとにかく早く帰りたいという気持ちしかなかったです……(笑)。
何事も経験くらいの気持ちで応募したので、10人に残ったときもまさか自分が選ばれるなんてという驚きの方が大きかったです。
――そこからデビューのチャンスを掴みたいという意志に目覚めたのはどのタイミングだったんでしょうか。
テレビに出るということが発表されてから地元の人たちがたくさん応援してくれるようになって、これだけ応援してもらえているんだから、中途半端な結果に終わるのは嫌だと思ったし、やるからには上を目指そうと思った。そこから気持ちが変わっていった気がします。
――「私が女優になる日_」を観ていて感じたのは、飯沼さんの意志の強さでした。審査員から満票をもらっても自分の準備していた演技ができなかったときは悔し涙で目を潤ませ、毎回の演技バトルも常に真剣勝負。あのいい意味での負けん気の強さは何で培われたものなのでしょうか。
中高のバスケ部ですね。特に中学が本当に厳しくて。私は副キャプテンだったんですけど、キャプテンがいないときに限って先生に怒られるようなことがあって。よく泣きながら学校の周りを走っていて、周りの人に「どうしたの? あの子」っていう目で見られていました(笑)。
朝練で先生に怒られて、朝から体育館を80往復したこともありました。途中で先生はいなくなっちゃうので、そこから手を抜いてもいいんですけど、性格的にやめられないんですね。で、80往復やりきるまでずっと全力。朝からヘトヘトで、本当にギリギリの毎日だったんですけど、そこで根性が鍛えられたというか。
たぶん部活をやっていなかったら私はもっとダメな人間になっていたと思う。苦しいことはいっぱいあったけど、あそこで培ったものが今の私の支えになっている。部活をやってて本当に良かったなと思います。
2021.10.11(月)
文=横川良明
撮影=松本輝一
スタイリスト=木下彩
ヘアメイク=Otama