ペレの椅子からヒーリングプールへ

ここだけが取り残されたように、ポツンとある大きな溶岩。ペレが座っていたのかーとも思うし、これ自体が意思を持ってここにあるかのような存在感

 石を重ねたかのように見えるその姿はたしかに椅子の形をしています、昔のハワイアンには、ニワトリがうずくまっているような形に見えたそうで、カパリオカモア(ニワトリの丘)とも呼ばれています。ハワイの島々を創ったと言われる女神ペレがオアフ島を創った後に、この椅子に座って次の旅を想い描いたとも言う不思議な場所。眼下はクイーンズビーチと呼ばれるシークレットビーチで地元の子たちが、スノーケルなどを楽しむ秘密の場所でもあります。

 海に突き出ている場所というのは、文句なしに気持ちがいい。そして、ペレの椅子に触りながら、なんとも大地というのは不思議なものをこの世に創って、私たちの想像力をかき立ててくれるものだな~と感心しつつ、さきほど通ってきたサンディビーチを右手に眺めます。ペレの椅子を中心に西側にあるサンディビーチのいちばん端が陽のヒーリングプールと言われ、反対側の東側マカプウビーチの端が、陰のヒーリングプールなのです。ハワイアンたちはとてもバランス感覚のある民族。パワーも陰陽のバランスで働くと信じているところはアジア系である私たちととても似ています。強いエネルギーをもらった後はいざ、ヒーリングプールへ。シーライフパークのすぐ正面にあたる海側に、マカプウヘイアウがあります。

下を眺めると入江になっていて、地元の子たちが飛び込んだり、泳いだり、スノーケルしたりと気持ちよさそう。ピクニックにもいいな~

 ここには漁業の神が宿ると言われ、旅立ちに際し守りを与えてくれる、ペレの椅子とはまた違う穏やかな空気の流れる場所。このヘイアウのすぐ下がヒーリングプールとなっていて、ハワイアンたちは昔から、心身の浄化をしていたそうです。ネガティブな感情は体にも悪い影響を及ぼすと知っていたハワイアンって賢い。いまでこそストレスとかデトックスとかって日常的に聞く言葉ですが、私が子供の頃はそんなに耳にしなかったはず。でも、大昔から心と体のバランスを大事に生活する豊かさを誇りにしていたからこそ、いまのこの時代に生きる私たちにも訴えかけるほどのハワイのパワースポットの数々。その中でも、とくにこのヒーリングプールで、私は素直な気持ちになれる気がします。嫌な感情を思いながら海に足をつけ、解き放つこと5分ほどで、ほっとできるのです。なーんにも考えていないようで、でも、気持ちいいな~、って思える。そうすると、今日に限ってハワイ語のチャント(祝詞)が聞こえてきた。海辺で寄り添うカップルと、カフの詠うチャント。偶然に見かけたウエディング、旅立ちに最高の場所ですもの!

工藤まや (くどう まや)
雑誌、TV、CMなどのメディアコーディネーター。ハワイ在住13年目。
アメリカ人の夫と愛犬2匹と虹の町マノアに暮らす。
CREA WEBで「おもてなしハワイ」を連載中。近著に山下マヌー氏との共著『かわいいハワイ』(マーブルトロン)

Column

工藤まやのおもてなしハワイ

ハワイに暮らすお洒落コーディネーター工藤まやさんが、“おもてなし”の気持ちを込めて、ハワイの気持ちのよい空気感たっぷりの話題をお届けします。

2013.05.21(火)