島民たちのあつい信仰心によって生まれた黒島天主堂
この黒島天主堂は1902年、マルマン神父によって建てられました。
マルマン神父が黒島に訪れた時、これまで培ってきた教会建築の知識の集大成を、という思いがあったそうです。そこで、島の人々に伝えました。
「私はここに大きな教会建築を建てる目的できた。すでに木造の教会がこの島にはあるが、そのままでいいのならば、帰ります」
ならば、お願いしよう、と島民。
けれど、マルマン神父が提示した島民への協力のお願いは、15~60歳の男性は1日につき60銭の寄付。当時の1銭は今の価値で200円なので、60銭は1万2,000円の計算になります。
キツイ条件ですが、自分たちの教会を少しでも美しくしようという思いが、黒島天主堂のあちこちに見てとれます。
約40万個のレンガを積み上げた外壁は、鮮やかなオレンジ色。黒島の土壌には鉄分が多く含まれ、鉄分が酸化すると赤くなることから、青空に映える濃いレンガ色になるのだとか。
外壁に近寄ってみると、レンガを縦と横に交互に積んだ、より強度を高めたイギリス積みであることがわかります。
建物の背後に回ると、丸いドームまでレンガ造り。積んだレンガでカーブを描くのは難しく、この天主堂のみだとか。
ロマネスク様式の教会内部は、美しいアーチを描くこうもり天井。青・赤・黄の幾何学模様のステンドグラスは東から西へ太陽の移動と共に、角度を変えて室内に色を添えます。
そして天井などに使われている木材を見ると、一枚の天板の片方に年輪、もう一方には木目が手描きされています。
また、ご聖体にステンドグラスの赤い光が当たるように設計されています。この2つの意匠は黒島天主堂ならでは。
2021.06.05(土)
文・撮影=古関千恵子