#222 Amanohashidate
天橋立(京都)

 京都府北部の日本海に面した、宮津湾に位置する天橋立(あまのはしだて)は、日本三景のひとつ。「日本の渚百選」や「日本の名松百選」、「日本の道百選」など、数々の日本百選に選ばれる名勝です。

 内海の阿蘇海、外海の宮津湾を分かつように海に伸び、しかも龍の背のように躍動感のある曲線が連続する、世にも不思議な地形の天橋立。

 長さは約3.6キロ、幅は20~170メートル。約5,000本もの松が林立し、日本の浜辺の典型的美しさである“白砂青松”のお手本のよう。ちなみに、天橋立はもちろん「日本の白砂青松百選」にも選ばれています。

 この海にかかった橋のような地形は、丹後半島の東側から流出した砂が、宮津湾の海流と、阿蘇海に流れ込む野田川の流れによって運ばれ、堆積したもの。海流と陸から注ぐ川、両側から砂が運ばれ、せめぎあい、何千年もかけて塀が築かれるように、形成されました。

 昔の人々も、文珠山や成相山など高い位置から、その美しくも不思議な、全体像を見ることができました。その分、驚嘆も大きかったことでしょう。信仰や文化、芸術、あらゆる分野が天橋立を中心に発展しました。

 たとえば『古事記』の冒頭では、国作りを命じられた伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)が、天の浮橋に立って混沌から大地を生み出したとされます。この天の浮橋が天橋立だ、とする説があります。

 また、8世紀に編纂された『丹後国風土記』には、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が天上界と地上を行き来するために架けたハシゴが倒れてしまったのが、天橋立だとされています。

 どちらにおいても、天橋立は異世界と現世を結ぶ存在。それだけ畏怖の念を抱く存在だったのかもしれません。

2021.05.22(土)
文・撮影=古関千恵子