「アプリは相手の素性が分からないところが一番不安でした。たとえば、お見合いなら仲人が保証人の役割をしてくれるわけですけど、アプリ婚活はすべて自己責任。本当は結婚している男性に騙されたらどうしようとか、遊び目的の人だったらどうしようとか。34歳で変な人につかまって時間を無駄にするわけにはいかないのに……という不安はありました。私が課金したアプリでは独身証明書や年収の証明書を提出する仕組みがあって多少は安心でしたけど、どんな人なのかは結局会ってみないとわからないし、最後までドキドキしていました」
アプリ経由での出会いと聞くと、膨大な人数のプロフィールを「アリorナシ」で次々と斬っていくような“数打てば当たる式”の出会いを想像する人も多いのではないだろうか。A子さんも自分で使うようになるまでは同じような偏見を持っていたが、使ってみて想像とは逆に、「出会う人の少なさ」に驚いたという。
「いいね」の中にも温度差がある
「私が登録したところは1日に紹介されるのは1人だけで、その人に『いいね』を押すかどうかを選ぶ形でした。年収や学歴、体型や喫煙者かどうかみたいな条件を入力してはいるんですけど、何日も微妙な人を紹介され続ける時期もあってそれは正直イラッとします(笑)。でも候補者が大勢いすぎると逆に決められなくなりそうで、1日1人というのは私には合っていたと思います。
お互いに『いいね』がついたらアプリ側が待ち合わせ場所と時間を決めてくれて、30分限定のお茶をする流れでした。その後に両方が『今後も連絡をとりたい』と答えると、初めて直接メッセージが送れるようになるんです。スケジュール調整も全てアプリ側がやってくれて、勇気を出して連絡先を聞く必要もないので楽すぎて感動しましたね」
A子さんは「いいね」をつけるのに慎重だったが、それでもマッチした4人の男性とは直接会ったり、オンラインで話す機会があった。そして「いいね」をつけるかどうかの判断自体もシビアだが、その「いいね」の中でも自分の心の中には温度差があるのを感じたという。
2021.03.04(木)
文=「文春オンライン」特集班