愛らしい絵柄の太巻き寿司作りに挑戦

 友人が暮らしていることもあり、太東界隈へは幾度となく訪れているのですが、これまで観光をしたことがありませんでした。これが、今思えば、実にもったいない。

 たとえば、太東海水浴場があるいすみ市の観光プロジェクトの一環で、この地に伝わる豊かな伝統文化などを伝える「いすみ市体験プログラム」。

 上総地方伝統の袖凧作り体験や、雛祭りのつるし飾り作り体験、目下準備中の内容にはスタンドアップパドルボード体験、盆栽体験、畳作り体験も(新型コロナウイルスの影響でお休み中のプログラムもあります)。

 なかでも気になったのが「太巻き寿司作り」です。

 太巻き寿司自体は全国で見られますが、いすみの太巻き寿司は数種の具材がただ巻かれているのではありません。包丁を入れるたびにまるで金太郎飴のように花もようなど、愛らしい絵柄が出てくるのです(なかにはムンクの「叫び」や「祝」の漢字もあるとか!?)。

 太巻き寿司の発祥は定かではないのですが、もともとは“芋がらの煮つけを芯にして握り飯をつくったもの”で、冠婚葬祭や人々が集まる際にふるまわれたご馳走。千葉県の郷土料理として「房総巻き」や「飾り巻き寿司」、「祭りずし」とも呼ばれています。

 今回、教えていただいたのは、いすみ在住の安藤クニさん。

 いすみへお嫁入りして半世紀以上、太巻き寿司を作り続けているそうです。そのデザインのレパートリーは、アザミや梅、椿、アジサイ、アヤメといった季節に応じた種類豊富な花々など。

 今回、教えていただいたのは、桜とタンポポ。薄く焼いた卵焼きや海苔、ムラサキ芋でピンクに染めたお米、かんぴょう、甘酢で煮たニンジン、大根の葉っぱなどの食材が並び、上総の山や海の食の豊かさを感じます。

 クニさんは説明をしながら手を動かしつつ、生徒さんに指導もしていきます。最初は覚えようとしたのですが、どこをどうすれば桜の花になるのか、枝になるのか、立体的思考が追い付かず……。

 でも、巻きすだれをはずして、包丁を入れて、花の絵柄が出てきた時には思わず、感動! 試食会には作った太巻き寿司に加え、クニさんお手製の漬物やお味噌汁、チキンソテー、デザートもいただいて3,000円なり、です。

2020.10.10(土)
文・撮影=古関千恵子