島の東西に残る源氏と平家の歴史

 さらに西へ進んで、実久(さねく)へ。集落に入ると、サンゴを積んだ石垣が、これまで沖縄などで見たものよりも平たいのに気づきます。

 聞くところによると、テーブルサンゴの欠片を積んでいるのだそうです。

 そして浅瀬が広がる、実久の浜へ。あいにく天気が悪く、“実久ブルー”と呼ばれる、青い海は見られませんでしたが、それでも太陽が出たら、さぞや美しいに違いないと思わせるビーチでした。

 実久の集落の入口にあるのが「実久三次郎神社」。

 保元の乱で敗れ、伊豆大島に流された鎮西八郎為朝(源 為朝)が、琉球に渡る途中にここに寄り、島の娘との間にもうけた子供に三次郎と名付けたという言い伝えがあります。

 一方、島の東の諸鈍(しょどん)には、源平の戦いに敗れた平 資盛が落ち延びてこの地に城を構え、島の人々に伝えたという国指定重要無形民俗文化財の民俗芸能「諸鈍シバヤ」が残されています。

 旧暦の9月9日には、島の西では源氏の「実久三次郎神社大祭」、東では平家の「諸鈍シバヤ」、島の東西で源氏と平家、それぞれが祝う1日になっているのも、何かの因縁を感じます。

 「ホライズンハウス」の紹介で、ガイドの寺本薫子さんからもお話を聞く機会を得ました。最初の質問は、島名の由来。

 「みなさん疑問に思われるようです。図書館に『瀬戸内町の地名の由来』というようなプリントがあって、そこに加計呂麻島は奄美大島の南端が欠けた島(欠けの島)、影の島という意味があるのではないか、と書かれていた記憶があります」とのこと。

 地図を見ると、大島海峡を挟んでパズルが合致するような海岸線の奄美大島と加計呂麻島。“奄美大島から欠けた島”に一票を投じたくなります。

 そして、加計呂麻島では3つの星の風景が堪能できるというお話。

 光害の影響を受けない加計呂麻島ではみごとな天の川が夜空に流れ、波打ち際には夜光虫がきらきらと青白い光を放ち、水中ではアマミホシゾラフグがミステリーサークルのような産卵床を形成します。

 224ページにわたる立派なガイドブック「まんでぃ」(島の言葉で“いっぱい!”という意味)が1冊できてしまうほど、ストーリーに満ちた加計呂麻島。次回は、寺本さんのガイドで歩いて回りたいものです。

加計呂麻島

●アクセス 奄美大島の空港から古仁屋港まで車で約2時間。加計呂麻島には生間と瀬相の2つの港があり、どちらも海上タクシーなら約15~20分、フェリーは20~25分。

●おすすめステイ先 ホライゾンクラブ
http://horizonclub-kakeroma.mystrikingly.com/

取材協力/kakeroma.com

古関千恵子 (こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること1/4世紀あまり。
●オフィシャルサイト https://www.chieko-koseki.com/

Column

古関千恵子の世界極楽ビーチ百景

一口でビーチと言っても、タイプはさまざま。この広い世界に同じ風景は一つとして存在しないし、何と言っても地球の7割は海。つまり、その数は無尽蔵ってこと? 今まで津々浦々の海岸を訪れてきたビーチライター・古関千恵子さんが、至福のビーチを厳選してご紹介します!

2020.08.01(土)
文・撮影=古関千恵子