バブル時代にイメージチェンジ
先頭を走った田原俊彦

 デビューした1980年から5年ほどの田原俊彦は、“メロウ”と“揺れる”がテーマであったように思える。しかし、80年代後半にかけては、バブルのイメージが強くなっていった。

 ちょうどその頃は「ラジオびんびん物語」(1987年)から「教師びんびん物語」(1988年)などに続く、「びんびんシリーズ」がスタートしたとき。

 田原俊彦は、「どうする?」や「抱きしめてTONIGHT」といったシリーズの主題歌を、ダークで高級そうなスーツを着て、歌い、ヒットさせた。

 デビュー当時からファンと公言していたマイケル・ジャクソンや欧米のヒット曲からの振付も大いに取り入れ、大人の、華麗なダンスを踊った。

 また1985年の「It's BAD」という楽曲では、デビュー前の久保田利伸を作曲に起用し、当時としてはいち早くラップを取り入れていたということも、彼の方向性を形づくったとも考えられる。

 バブルが始まる1年前、1985年にリリースした「華麗なる賭け」には、「世界中のgorgeous あなたに集めて」という歌詞が出てくるが、バブルのきらびやかでゴージャスなイメージを先取りしていたのではないだろうか。

 そんな大人の魅力を持って、田原は「an・an」の「好きな男ランキング」などで4年間にわたって1位を獲得。その時期は、奇しくもバブルと重なるのだ。

2019.06.12(水)
文=西森路代
写真=文藝春秋